情報誌CEL
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作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
2010年01月08日
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京 雅也 |
住まい・生活
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その他
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情報誌CEL
(Vol.91) |
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阪神・淡路大震災が起こってからもう15年。ガス供給の復旧に携わった当時のことは今でも鮮明に思い出せる。発生の翌日、被災地に入ったが、歩いて西宮に向かう途中、崩れ落ちた建物や高速道路、宙づりになったバスを目にし、言葉を失った。その日から今津の基地に泊まり込み、資材の配送や食料の確保などに無我夢中で取り組んだが、全国から駆けつけてきてくれた応援部隊に感激し、また数多くのボランティアが活躍する姿にも目をみはった。
大震災で、多くの方々が被った苦しみや悲しみを、決して風化させるべきではないと強く思う。しかし、それから時は過ぎ、人々の記憶もだんだんと薄れてゆく。その一方で、毎年のように全国各地で風水害や地震などの被害が発生する。時に人智を超えた規模や状況でやってくる災害に、私たち一人ひとりは何を教訓とし、どう対処すればいいのか。
そんなとき、「減災」という言葉に出会った。それは、日々の暮らしの中で、災害が起こった際の被害をできるだけ少なくするように努めること。例えば、地震に対しては、建物の耐震性を高め、家具の転倒を防ぐ処置などは大前提だ。だが、「減災」のもつ意味はさらに広がりをもつ。
「生活防災」を提唱する矢守克也氏は、そのよい例として「土手の花見」を挙げる。毎年春、土手の村中の人たちが集まってお花見をすることで、土手は踏み固められ、水が出ても切れにくくなる。それだけでなく、皆で花見の準備をし、楽しんで時を過ごすことが、お互いを知り、気持ちを通わせ合うことにつながる。同時に、皆で地域の様子を見渡し、災害に対処する地域の智恵を伝承していく場にもなるだろう。
今号のレポートで紹介した、加古川グリーンシティ防災会でも、その活動のモットーは「楽しい減災」。だから、住民たちで取り組む活動は、やること自体が面白くて、無理なく続けられ、みんなが仲良しになれるものだ。同会会長の大西賞典氏は、「防災・減災は、自分の大切な人を守るための活動」だという。だからこそ、地域が安全で楽しいところであってほしいのだ。
本誌読者のみなさんにも、家族で、地域で、仕事場で、今一度「減災」の視点から日常を見直してみてほしい。今回の特集が、そのひとつのきっかけとなればと切に願う。