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情報誌CEL

赤池 学

2010年03月26日

生物多様性を守るためのライフスタイル

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2010年03月26日

赤池 学

住まい・生活

ライフスタイル
住宅
食生活

情報誌CEL (Vol.92)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 政権交代後の国会における鳩山首相初の所信表明演説の結びに、印象に残る次のような言葉があった。
 「従来の発想のまま成熟から衰退への路を辿るのか、それとも新しい志と構想力をもって、成熟の先の新たなる飛躍と充実の路を見出していくのか。今、その選択の岐路に立っているのです」
 このメッセージは、様々なアナロジーとして理解することができるが、科学技術や産業技術に置き換える時、少なくとも筆者にとって極めて示唆的な意味を持って感じられた。従来の発想とは、地下資源依存の人工物サイエンスであり、新たなる飛躍と充実の路とは保全、増産、改変までが可能な生物資源依存のアグリバイオサイエンス(※1)への転換を意味しているように思えたからである。
 2010年10月、愛知県名古屋市において、「生物多様性条約国際締約国会議」、通称COP10が開催される。生物多様性と聞けば、多くの人々には、「自然生態系の保全」いわゆる、「自然保護」をイメージされるかも知れない。しかし、COP10に世界中から1万人以上の人々が集まってくるだろうと言われている真意は、実は自然保護といった綺麗事ではなく、生物資源を今後、各国がいかに知的に利用し生物の遺伝子資源がもたらす利益をどう公平、中立に分配するのか、その枠組みづくりの議論に熱い注目が集まっているからに他ならない。
 生物資源の知的利用、生物の遺伝子資源がもたらす利益。と、言葉にすると、何やら小難しいバイオビジネスの用語のように思えるが、その実際は生物や生物ゲノムの機能性や付加価値を探索し、生活や産業に活かすことであり、実は私たちの暮らしに密接に関わってくる、身近な生物の可能性を改めて科学することの重要性を意味しているのだ。
 例えばユニバーサルデザイン、エコデザインを標榜する私たちのユニバーサルデザイン総合研究所が、その設立当初から取り組んできた事業の1つに、「シックハウス症候群」を解決する建材や住宅のデザイン開発がある。そこで最初に手がけたのは、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の治療や研究に関わる、臨床環境医学者とのネットワークづくりであった。そこにヨーロッパの健康環境住宅に精通している建築家や、家政学や家庭の空気環境の研究者を呼び込んで、NHKや朝日新聞などと一緒に、多様な化学物質を使っているシックハウス住宅の問題を指弾すべく、徹底してテレビや新聞でキャンペーンを張った。そして、当時の家づくりの課題を多くの生活者に周知させた上で、そのソリューションとなる建材が作れるメーカー、あるいはそれをアセンブリして良質な健康住宅を作れるメーカーとのデザインコンサルを行ったのである。日本の家は現在、確実に健康になったが、実は私たちの会社が貢献した部分も少なくはないと自負している。

(※1)agribio science。農業分野でのバイオテクノロジーの研究や利用などを目的とした科学の総称。

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