上赤 博文
2010年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2010年03月26日 |
上赤 博文 |
エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.92) |
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2002年度から小・中学校で一斉に、高等学校では2003年度から学年進行で、「総合的な学習の時間」がスタートした。そのメニューとして環境教育、国際理解教育、進路学習等が実践されているが、さらに環境教育のメニューとして質の高い体験学習が模索されている。学校における自然体験学習は、従来は学校内での飼育・栽培や学校近くの水田を借りてイネを栽培するような単発的な内容が一般的であったが、「総合的な学習の時間」では地域の人材や素材あるいは地域の自然を活用し、長期的、計画的そして多角的なアプローチで組み立てられるプログラムが多い。教材化には大変な時間と労力が必要であるが、多忙な教育現場の中でこのような取り組みが模索されているのは、体験学習が子どもたちの「生きる力=自分で課題を見つけ、自ら学び、考え、主体的に判断し行動する力」を養うのに効果があると認識されているためであろう。
学校では自然観察、自然学習、自然探検などの名称で自然と触れる体験活動をする。これらの活動は、生き物の観察が基軸であり、そこから様々な気付きが得られるわけであるが、今後は新しい視点である「生物多様性」を意識させる必要がある。生物多様性を一言で表現すると、「ところ変われば生き物変わる」である。世界中には無限と言っていいほど多様な環境があって、それぞれに違った生物が生活している。そこには違った生態系がある。白神山地のブナ林やボルネオの熱帯林のような発達した生態系から水槽のようなミニ生態系まで様々なレベルの生態系がある。世界各地に違う生き物が生存していることで生態系の多様性、生物種の多様性ができあがる。これに後で詳述する遺伝子の多様性まで考えたものが生物の多様性である。ところが、この生物多様性が人間活動によって急速に劣化あるいは消失しようとしており、その終末的な姿として生物の絶滅が急速に進行しているのである。