豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2010年03月26日 |
豊田 尚吾
|
エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.92) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
生物多様性と聞いて、すぐにその理念や実践すべき事項が頭に浮かぶ人は少ない。少し学べばそのコンセプトが重要であることは分かるが、現状のようなコミュニケーション方法ではその理解がなかなか進まないのではないかと懸念している。ポイントは「伝え方」である。まずネーミングがよくない。「生物多様性」は英語の直訳になっていて、誤解を招きかねない言葉であるように思う。今更それを変えるわけにはいかないが、直感的に受け入れ可能なサブタイトルや、説明なりが必要ではないか。また、地球温暖化対策=温室効果ガス排出量の削減という、強烈なイメージがあるのに比べて、生物多様性は問題の体系や具体的弊害の把握、効果的な対処法が想像しにくく曖昧でもある。このことが一般的な生活者への関心喚起を妨げていると考える。
本稿では、まず生活者の生物多様性に関する認知度の低さを確認した後、上記に示した問題意識を今一度、明確にする。次に経済的視点から生物多様性を意味づけ、その面からの体系的把握が可能であることを論じる。より具体的には、生態系サービスを供給する公共財、準公共財(ストック)としての意義を明確にし、その外部性の持続的な享受の重要性理解を促す。
その後、CELの生活意識調査をもとに、現状の生物多様性に関する生活者の実態を可能な範囲で分析し、その理解に努める。さらに生物多様性に関する議論や実践の大まかな流れをつかんだ後、生活者のコミットメントの方向性について考察を行う。
結論としては企業がCSRの一環として生物多様性に取り組んでいるのと同様に、生活者もそれだけを取り出して対応するのではなく、消費者の社会的責任とその実践の中で体系づけ、他の課題との整合性をとりながら取り組むことの必要性を提案する。