豊田 尚吾
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2008年08月07日 |
豊田 尚吾
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2010年5月11日新規登録 |
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振り込め詐欺の被害がまた増えているのをご存じですか。今年1〜6月で被害額は約167億円(前年同期比1・6倍)。その中で身内を騙(かた)って事故の示談金を振り込ませるなどといった、いわゆるオレオレ詐欺の被害額は約92億円(振り込め詐欺全体の半分強)で同1・5倍です。詐欺者のだます技術がますます巧妙になっているようです。
また、振り込め詐欺には他に「還付金詐欺」もあり、1〜6月の被害額は約36億円、同4・4倍と急増しています。これは税金や医療費の一部を返すといって、ATMに出向かせ、携帯電話で指示して知らぬ間にお金を振り込ませる詐欺です。こんな新手の詐欺が被害を拡大させています。
ではどう対処すべきでしょうか。詐欺者の弱点の一つは「時間」です。時間があれば人は冷静になれますし、他の人に相談もできます。だから時間を与えないように、詐欺者はさまざまな理由を使ってあなたをせかすのです。
そこで具体的対策を一つ紹介すると、知らない人からの電話に対し、用件を聞く前に「その者は旅行でおりません」と適当な理由で常に居留守を使うのです。そして本人に伝えるからと言って用件を聞きます。ちゃんとした相手であれば用件と連絡先を言うはずです。詐欺者は相手に時間を与えることを嫌がりますので、伝言で本題に入ることはまずありません。本人でないので分からないと言い張れば、いったん電話を切って考える時間を確保し次の手を打てます。
もちろんこれも万能ではありません。だます側は詐欺のプロ集団です。個人の力だけでなく、警察、業界、行政、メディア、近隣が団結して取り組む他はありません。警察は対策本部を作り、業界はATMや携帯電話の利用を制限しています。また「振り込め詐欺救済法」が6月に施行され、取られたお金の一部が戻ってきやすくなると期待されています。
そのような中、私たちはまず健全に疑う心を養うべきでしょう。疑うことは悪いことではなく、信じるべき人を信じるために疑うという健全さがあればよい。それを養う一つの手段が居留守法なのです。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所主席研究員 豊田尚吾)