二宮 周平
2010年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2010年07月01日 |
二宮 周平 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.93) |
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-近代的な家族法の変容-
人間の独立・平等・自由を理想とした近代社会が設けた家族法は、(1)家族は男と女のカップルで作られること
(2)そのカップルは結婚という社会的承認をふまえること (3)こうしたカップルから生まれた子が正統な子(嫡出子)であり、婚姻は親子関係を証明する基準となること
(4)家族の永続性を求めるため、離婚は限定的にしか認められないことを前提としていた。この上に、(5)男性による女性の支配(家父長制)と、(6)性別役割分業が重なり、男女の不平等が個別の家族関係だけではなく社会全体に広く浸透し、経済、人々の意識、言語構造まで規定していた(丸山茂「家族の変容と国家」慶應義塾大学経済学部編『市民的共生の経済学3
家族へのまなざし』〈2001、弘文堂〉参照)。
しかし、こうした前提は欧米においては崩壊した。(1)同性愛者の結びつきを婚姻として承認したり、パートナーとしての登録を認める立法例が登場し社会的に許容され始めた。(2)事実婚の比率が増加し、その結果
(3)の婚外子の出生率が大幅に増え、婚外子差別をなくす法改正がなされた。また、生殖補助医療技術の進歩によって血縁上の親と育ての親が分離する可能性が生まれ、婚姻が親子関係の証明とはなりえない場合も出てきた。(4)離婚の増加に対応して、離婚の自由を広げる法改正がなされ、ひとり親家庭や再婚家庭が増加し、離婚は家族のメンバーチェンジの意味しかもたなくなった。女性の職場進出によって(6)は見直しが始まり、女性の経済的自立に伴い(5)の家父長制も意味をなくしつつある。
日本の場合、(1)(2)(3)を当然とする意識が根強い。事実婚は少数であり、婚外子も出生率が増えたとはいえ、2%を超える程度である。なお夫婦と親子を一体のものと見る人々も多い。しかし、女性の雇用労働者化が進み、パートの比率が高いという限定がつくものの、共稼ぎ世帯が当たり前となり、夫妻の行動様式は多様化している。離婚の増加、婚姻年齢の上昇、高齢者の増加から単身者、ひとり親世帯や高齢の夫婦だけの世帯が増え、家族の形態も多様化した。2000年代になると、夫婦と未成年の子という標準的な家族は、世帯全体の3割を切り、婚姻カップルの4分の1は再婚である。
一定の経済成長を果たし生活の質の高度化が求められる社会では、家族という親密な生活圏における自由が求められる。大きな流れとして、欧米の動向は日本にも共通する