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情報誌CEL

山根 真理

2010年07月01日

ネットワークとしての現代家族

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2010年07月01日

山根 真理

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情報誌CEL (Vol.93)

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-家族は集団か?-
 「ネットワーク」として家族をとらえる見かたは、奇妙に思えるかもしれない。「家族」は集団ではないのか? 家族がネットワークである、とは一体どういうことなのか、と。
 家族研究の領域では、家族を集団としてとらえる見かたは、長らく一般的であった。たとえば森岡清美の「家族とは、夫婦・親子・きょうだいなど少数の近親者を主要な成員とし、成員相互の深い感情的かかわりあいで結ばれた、幸福(well-being)追求の集団である」(森岡、1997)という家族定義は、定評あるテキストの中で1983年に示されて以来、長らく家族研究のスタンダードであり続けてきた。「社会集団」の基本要件は、有斐閣の『新社会学事典』(1993年)によれば、(1)継続的な相互作用(2)共同の集団目標の設定と協働(3)規範の制定による成員規制(4)地位と役割の配分(5)一体的なわれわれ感情に基づく成員連帯である。「家族」は、このような意味で「集団」として捉えられてきたわけだが、人類学の記録に目を転じると、人びとが近しい人との社会関係を、「集団」のような形で営んではいない社会は珍しくはない。
 坪内・前田らによる「マレー社会」の研究によると、マレーの人びとの家族概念は、そのメンバーシップ、範囲ともに明確ではなく、重層的である。マレー語で「家族」の意味で最もよく用いられるのは「クルアルガ」という語であるが、この語の指す範囲はあいまいで、広く親族を含めて用いられることが多い。一つの家屋に同居するのは一組の夫婦(とその子)を基本とするが、必要に応じて近隣に居住する親子、きょうだいなどの親族がメンバーに加わったり離れたりする。「家族」の認識も居住の単位も、明確な輪郭をもたない。このような社会では家族は「集団」というよりは個人を中心とした二者関係の累積―「家族圏」として把握される。(坪内・前田、1977)
 坪内らはさらにこの見かたを一般化し、「家族」そのものを「家族圏」として捉えることを提案する。もともと境界のあいまいなネットワークがあって、そこから何らかの生活集団を明確にしようとする力が働いたとき、家族は集団性を強める、とみるのである。日本の「家」や、高度経済成長期に大衆化した「近代家族」(私的領域の情緒結合を重視した性別役割分業家族)は、ネットワークから「集団」を取り出す力が強く働いた家族、とみることができよう。

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