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情報誌CEL

定行 泰甫

2010年07月01日

家族的なつながりを育むコレクティブハウスの暮らし

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媒体(Vol.)

備考

2010年07月01日

定行 泰甫

住まい・生活
都市・コミュニティ

ライフスタイル
住生活
その他

情報誌CEL (Vol.93)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

-多世代が共生する新しい居住スタイル-
 26年の人生において、定行泰甫さんは13回の引越しを経験している。初めての引越しは3歳のとき。父親の仕事の都合で東京都内の社宅からアメリカのコンドミニアムへ引越しして、5歳で帰国したのちも賃貸および分譲マンション、2世帯住宅、留学先の学生寮など、様々な形態の家で暮らしてきた。そんな多彩な居住歴の中で、初めて親元を離れ、自らの意思で選んだ住まいが「コレクティブハウス」である。
 「コレクティブハウス」とは、専有の住戸以外に“コモンスペース”と呼ばれる共有のキッチンやリビングが確保され、住人同士が生活の一部をシェアする共生型住宅。2003年6月、日本初のコレクティブハウス『かんかん森』(東京都荒川区)が竣工。定行さんは建築家やコーディネーター、他の入居希望者とともに立ち上げのメンバーに加わり、オープンを待ってすぐに入居した。
 ここでは週3回、“コモンミール”という当番制の食事が提供され、献立から買い物、調理まで住人が行う。野菜づくりや木工ができるスペースもあり、どれも自主運営・自主管理が基本。家事や余暇の時間を共有し、家族のような助け合いにより、快適な生活とコミュニケーションが維持されている。
 両親が共働きで一人っ子の定行さんは、子どもの頃から近隣の住人たちと親しく関わり、様々な人とのつながりの中で成長してきたことから、大人になっても「多世代との接点がある暮らしが理想」と話す。
 また、『かんかん森』に入居する前の中学・高校時代、共有施設付きの「サービス型賃貸マンション」(東京都北区)や、自主運営の共同住宅「コウハウジング」(アメリカ・バークレー)でも暮らした経験がある。子どもから高齢者まで、幅広い年齢層との交流が楽しい思い出として記憶に残っており、それが「コレクティブハウス」を選んだきっかけでもあったという。
 大学時代の2年間を過ごした『かんかん森』では、60代の女性とルームシェアしていた。「なんでも相談できる友だちみたいな存在でした。お互いに退去した今も交流があり、かけがえのない人生の先輩」。年齢や性別を超え、血縁ではない他人と深い絆を結べるのは、多世代が集まる「コレクティブハウス」だからこそ。
 だが一方で定行さんは、当時の気持ちをこう振り返る。「子どもの頃には分からなかった人付き合いの難しさを初めて意識することができた。また、様々な人との関わりの中で、“家族は特別な存在”だと実感するようになりました」。
 引越しを経験するたびに、自分に合った生き方を住環境に求めてきた定行さん。その答えとして選んだ「コレクティブハウス」で、老若男女が共生する小さな社会を垣間見る。そこは、定行さんが人間関係を学び、家族のつながりを再認識した場所である。 

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