豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2010年10月01日 |
豊田 尚吾
|
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.94) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所(以下、CEL)は、今年も「これからの住まいとライフスタイルに関する生活意識調査」を1〜2月に実施した。本誌は「現代生活者の住まい・生活観2010−持続可能性と生活満足」と題し、本章では調査結果から得られたデータを、CEL研究員が分析、報告を行っている。
本稿では、それに先立ち、調査方法や問題意識、特徴を明らかにすることで、この調査の全体概要を示すとともに、本章各論考の理解に役立つような情報を提供することを目的としている。
今回の調査の大きな特徴は回答者の補充を行ったことである。本調査は基本的にパネル調査であり、1度回答してくださった方々に、毎年継続してアンケート調査を行っている。これによって、全体の動きだけでなく、“個人”がどのように意識を変化させているかを追跡できるというメリットがある。実際に、昨年の季刊誌「CEL」90号では過去の調査との比較を柱に分析を行った。
一方、パネル調査は、長期間にわたる、回答者の追跡が難しいという問題も持っている。同じ人に回答してもらうにあたっては、転居や不在といった障害が立ちはだかる。その困難の度合いは年齢層によって異なる。特に若年層は移動が頻繁であり、回答者とコンタクトをとり続けることが難しい。また、当然のことながら、5年経てば26歳の回答者は30歳になり、全回答者を追跡できたとしても、そのままでは20代前半の回答者はいなくなってしまう。
そのため、第1回調査においては、20代の回答者が全体の11.8%、30代が22.6%、40代が22.0%、50代が23.1%、60代が20.5%とバランスがとれていたのに対し、昨年第5回調査では、20代が5.6%、30代が15.8%、40代が24.0%、50代が24.3%、60代以上が30.3%とかなりいびつになっている。これは3年前の第3回調査において、約500人の新規回答者を追加したうえでの値である。
このような問題を克服するため、今回の調査では若年層を中心に、新規対象者を392名補充した。それにあたっては、個人情報保護法の運用が厳しくなり、従来の住民基本台帳でのサンプル抽出が困難となっている。そのため、今回からエリアサンプリングという(住宅地図を用いる)方法を利用した。
ここに、今回の調査の問題意識が集約されているといっても過言ではない。すなわち、従来堅持してきた、無作為抽出という中立性を、ある程度あきらめて、若年層の意識データを意図的に多く収集したことが、今回の特徴である。住まい、地域コミュニティ、少子高齢化問題、環境・エネルギー問題、ライフスタイル問題などに関し、世代間の意識がどう違うのか、あるいはどこが同じなのかを検討する。そのことを通じて、次代の持続可能な社会や生活に対するヒントを得ようと試みた。