弘本 由香里
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2010年10月01日 |
弘本 由香里
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住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.94) |
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−はじめに−
高齢期の居住を支えるための仕組みづくりが、社会全体の課題と認識され、21世紀に入って以降「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の全面施行や改正も行われてきている。参考までに同法では、国土交通大臣と厚生労働大臣は、次の7つの基本方針を定めなければならないとされている。(1)高齢者に対する賃貸住宅及び老人ホームの供給の目標の設定に関する事項、(2)高齢者に対する賃貸住宅及び老人ホームの供給の促進に関する基本的な事項、(3)高齢者が入居する賃貸住宅の管理の適正化に関する基本的な事項、(4)高齢者に適した良好な居住環境を有する住宅の整備の促進に関する基本的な事項、(5)高齢者がその居宅において日常生活を営むために必要な保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の確保に関する基本的な事項、(6)高齢者居住安定確保計画の策定に関する基本的な事項、(7)その他、高齢者の居住の安定の確保に関する重要事項。同方針に基づいて、都道府県は高齢者の居住の安定の確保に関する計画を定めることができる。
法制度の枠組み整備を背景にしながら、数々の施策が繰りだされてきているが、果たして社会への浸透はどの程度進んでいるだろうか。高齢期の居住の問題を、多様な世代が社会全体の課題としてとらえる認識や、個々の適切な選択をサポートするシステムは機能しているだろうか。こうした問題認識に立って、当研究所(大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所)による、「これからの住まいとライフスタイルに関する生活意識調査(2010年)」では、高齢期の住まいの選択に関するいくつかの問いを設けた。その結果を紹介し、今後に向けて、意識と行動の現状を見つめてみたい。
なお、同調査(2010年)は全国の20歳〜74歳の男女個人を対象とし、標本数は1182人。継続対象者については、層化2段階無作為抽出、新規対象者についてはエリアサンプリングとし、特に今回の調査では若年層を中心に新規対象者392人の補充を行い、年齢構成を補正している。調査方法や回答者の属性については、本誌31ページから35ページの「2010年生活意識調査の概要」を参照いただきたい。若年層の補充によって年齢構成のバランスはとれているものの、回答者に一人世帯が少ないことや、一戸建比率や持ち家比率が高いなどの偏りはある。その点は念頭に置きつつ、調査結果を概観していきたい。
−高齢者向けの住まいの認知度−
現在日本には、高齢者向けの住まいとして、過去の制度の変遷を反映するような形で、さまざまな種類の住宅や施設が存在している。厚生労働省が所管する、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(A型、B型、介護利用型)、老人保健施設、療養型病床群、有料老人ホーム(介護付き、住宅型、健康型)、グループホーム、生活支援ハウス。国土交通省が所管する、シルバーハウジング、高齢者向け優良賃貸住宅、高齢者円滑入居賃貸住宅・高齢者専用賃貸住宅、安心ハウス。その他に、厚生年金老人ホーム・厚生年金終身利用老人ホーム、簡易保険老人福祉施設、シニア住宅、高齢者向けマンションなどがある。