当麻 潔
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2011年01月11日 |
当麻 潔
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.95) |
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−はじめに−
生物多様性の保全について、国際社会がその世界的な課題や枠組みを議論する「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が、2010年10月18日(月)〜29日(金)、日本ではじめて愛知県名古屋市において開催された。また、COP10の前週の11日(月)〜15日(金)、バイオテクノロジーにより改変された生物(遺伝子組み換え生物)が生物多様性に及ぼす悪影響を防止する措置を規定した「生物多様性条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(以下、「カルタヘナ議定書」)」の第5回締約国会議(COP-MOP5)も同じく名古屋で開催された。生物多様性を批准する193カ国・地域のうち、179カ国・地域が出席し、国際機関、先住民代表、企業、市民団体等1万3千人以上が参加した。
生物多様性条約は、1992年に開催された「環境と開発に関する国際連合会議(地球環境サミット)」で、「気候変動枠組み条約」と同時に採択されたものであるが、その認知度・関心度には大きく差がある。大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所(CEL)が、2010年1月に行った「これからの住まいとライフスタイルに関する生活意識調査(第6回調査)」では、生物多様性を知っている人は約13%で、半数以上の人は言葉さえ聞いたことがないと回答している。一方、2009年末にデンマークのコペンハーゲンで開催された「気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」は、鳩山前首相やオバマ米国大統領も参加し、世界中の注目を集め、政府関係者のみならず、企業や一般市民もその議論に関心を持った。
分かりにくい生物多様性の保全について、今回の名古屋でのCOP10の開催は、連日のマスコミでの取り上げ等により、一般市民を含め、その認知度や関心度の向上に貢献できたものと思われる。
本稿では、COP10の結果を振り返り、残された課題と今後の生物多様性の保全について考察してみる。
−生物多様性保全の必要性−
COP10を振り返る前に、生物多様性保全の必要性について、ここで再確認しておくこととする。 地球に生命が誕生してから約40億年を経過して、森林、河川、大地のあらゆる場所で、生物は進化と絶滅を繰り返してきた。この地球上には、科学的に明らかにされている生物種が約175万種、未知のものも含めると約3千万種もの生物が暮らしているといわれている。こうした多種多様の生物には、(1)森林、湿原、河川、さんご礁等さまざまな自然があり(生態系の多様性)(2)さまざまな自然の中で、動植物、微生物等いろいろな生物が生きていて(種の多様性)
(3)同じ種の中でも、遺伝子の違いから、多種多様な個性が存在する(遺伝子の多様性)、という3つの多様性がある。