豊田 尚吾
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2011年01月11日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.95) |
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−はじめに−
私たちにとって、社会は生活の基盤であり、それが持続可能性を維持することは望ましい。これは議論の前提として承認できるであろう。こう変化すべきだという改善方法については、人により様々な異見はあるだろうが、最低限、社会の基盤が崩壊するような事態は避けなければならないということには同意できるはずだ。
それを前提とすると、生活経営面から見た、社会の持続可能性に対する課題が何であるのかを明確にしなければならない、という問題意識を持つことができる。CELが行っている生活意識調査などを見ても、切実に感じているのは、身近な経済や健康、治安などの生活リスクである。環境やエネルギーなどは、長期的な課題であるが関心は高まりつつある。
従来、季刊誌「CEL」誌上などにおいて、(1)新興国の経済発展を含むグローバル経済化(2)環境やエネルギー面での制約(3)少子高齢社会における経済・社会構造の変化、あるいは(4)ICTの発展による生活への影響などを、大きな4つのトレンドと指摘してきた。そして、それらが社会の持続可能性に大きなインパクトを与えると主張してきた。
では、それに対して社会の持続可能性を維持するために必要なことは何であろうか。その中で、生活経営面から見た重要事項は何なのか。このような課題に取り組むことはCELの主要なミッションである。そこで、今一度、このことについて整理することを本稿の目的と定めた。
以下、課題の整理、その中での生活問題、あるべき方向性について論じていく。
−持続可能性のリスク(何が課題か)−
先に述べた4つのトレンドについては再三、繰り返していることであるが、改めてここで再検討をしておきたい。
(1)グローバル経済化
グローバル経済化に伴い、「資本の論理」が日本の経済活動全般に浸透し、資本など、経済資源の配分の効率性が徹底的に追求される。それは古い商慣行を見直すなどのよい面もあるが、従来型の経営と従業員との関係をよりビジネスライクにするなどの側面もある。被雇用者としての生活者にとっては賃金、あるいはそもそもの働く場自体が不安定化するなどの課題に直面する。
特に従来、長期雇用が主流であった、中堅規模以上の企業労働者(社会での中間層を形成する主体)にとって、新しい職を見つけるという意味での労働市場が日本では十分に発達しておらず、いったん失職すると、以前と同様の雇用条件を期待することは難しい状況に陥る。
さらにグローバル経済化のもう一つの現象として、従来の発展途上国が成長段階に入りつつあるということが指摘できる。特にBRICsはそれぞれの人口規模が大きく、世界経済に与えるインパクトもそれだけ大きい。そしてその後にはVISTA、N−11(両者は一部重なっている)などが控えている。