近藤 民代
2011年03月25日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2011年03月25日 |
近藤 民代 |
住まい・生活 |
その他 |
情報誌CEL (Vol.96) |
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-はじめに-
本号の特集は「持続可能な未来につなぐCSR」である。本稿では民間企業ではなく、地域社会における大学を地域の課題解決に取り組むひとつの主体として位置づけて、現代日本の地域再生において地元の大学がどのような役割を果たすことができるのか、果たすべきなのかについて考えてみたい。その手掛かりとして、米国における多主体パートナーシップによる地域再生を例に挙げて、日米の比較をしながら論じてみようと思う。多主体パートナーシップの構成員は、地方政府(我が国での都道府県・市町村などの自治体)、民間企業、非営利組織、地元の大学などである。従来、大学の機能は研究と教育であったが、近年、我が国では大学存続のための組織改革、地方分権の推進などを背景として、大学は自らの使命として「地域貢献」を掲げることが増えている
-地域再生の具体的中身はなにか-
日本全体で都市やそれを取り巻く郊外を含めて都市計画や住環境の側面から抱えている課題には以下のようなものがある。
都市部では中心市街地の衰退化、更新が進まない災害に脆弱な木造住宅密集地域の存在、ニュータウンなどの郊外住宅地における高齢化やサステイナビリティの確保などがある。また、地方都市では大型ショッピングセンターの増加やそれに伴う自動車中心型の社会の進展によって、身近な商店や商店街が消滅して高齢者が近くで食料品や生活必需品などを買うことができない「買い物難民」も深刻である。国土の約7割を占める中山間地では限界集落が増加しており、持続可能な中山間地のあり方についても検討することが求められている。
一方、米国では何が地域再生の課題となっているのか。チェーン店による大規模ショッピングモール建設と中心市街地の衰退、自動車依存型の都市構造、止まらない都市のスプロールと郊外化の進展などは、程度の差こそあれ、日米で共通した課題である。米国ではコンパクトで伝統的な近隣居住地の良さを取り戻そうとするニューアーバニズムというコンセプトのもとで、公共交通機関中心のまちづくり、地域生活空間に住宅、商店、職場、学校、公園、公共施設などの複合機能を持たせることなどが都市計画の潮流となっており、地域の文化、良さを生かした地域独自の地域再生が目指されている。日本では人口減少社会を背景とした都市経営的な視点から郊外化を抑制する「コンパクトシティ」が目指すべき一つの都市像として語られることが多くなっている。