株式会社いろどり
2011年03月25日作成年月日 |
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2011年03月25日 |
株式会社いろどり |
住まい・生活 |
その他 |
情報誌CEL (Vol.96) |
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地域ビジネスでまちづくり
-事業を通して生涯現役社会を形成-
農家の庭先や段々畑に四季折々の花木が育ち、美しい景観を成す徳島県上勝(かみかつ)町。もみじや南天、梅に桜など、これらの花木から摘む葉や花は日本料理に添える“つまもの”となり、町の産業を支える大切な地域資源である。
「彩(いろどり)」と名付けられた“つまもの”の生産事業は1986年にスタート。当時、上勝町農業協同組合の職員だった横石知二氏(現「(株)いろどり」代表取締役社長)が、異常寒波で打撃を受けたみかん栽培の代替策のひとつとして、一年中商材を確保できる?つまもの?の商品化に乗り出したのがきっかけ。軽くてきれいな商材は高齢者や女性も扱いやすく、「彩」の仕事を通して「町民一人ひとりに役割をつくり、“地域から必要とされている”と感じる社会を築くこと」という横石社長の思いが事業テーマとなっている。人口約2千人、高齢化率約5割の同町で、「彩」の事業に参画する約200名の生産農家の平均年齢は約70歳。今や全国一の出荷量を誇る、この事業の原動力は、地域の高齢者たちである。
「彩」の運営を担うのが「(株)いろどり」で、高齢者が使いやすいパソコンでの受注システムを96年に導入。全国の市場から毎朝入る注文を農協が取りまとめ、各農家へ一斉に発注する。農家ごとに栽培状況が異なるため、受注する商品と数量は各自で判断する。受注は早い者勝ちで、パソコンのすばやい操作も求められる。また、売れ筋の傾向など農協がつかんだ市況の動きを、「(株)いろどり」から各農家へ毎日配信。生産者はその情報をチェックして翌日の出荷商品を予想するなど、パソコンを活用しながら一事業主の意識を持って取り組んでいる。
作業は、葉や花の摘み取り、検品、パック詰め、農協への運搬までを農家が行い、その後の出荷業務は農協の職員が担当。農協と農家、そして「(株)いろどり」の協働により仕事が流れている。さらに、農家ごとの売上金額をパソコン上でランキング表示するシステムも功を奏し、高齢者のやる気を喚起。「ビジネスとしての手ごたえがあるから楽しくて生きがいを感じる。実際、上勝町のお年寄りはとても元気で、医療費や生活保護費が少ないというデータも。地域福祉にもつながる彩の仕事で、生涯現役社会を実践しています」。そう語る横石社長は現在、“後継者育成”にも力を注ぐ。
2010年より始まった内閣府の事業「地域密着型インターンシップ研修」では「(株)いろどり」が運営を手がけ、上勝町においては2年間で約200名を受け入れる予定だ。11年度は町でも雇用対策の枠組みに予算を大幅に計上するなど、地域をあげて人材育成の支援を行っている。その中心的役割となる「彩」の事業は、新しい農業モデルとして若い世代にも魅力的に映り、「上勝町で働きたい」と志願するiターン者が後を絶たないという。高齢者の暮らしに活力を与え、同時に後継者を受け入れる場を創出し、持続可能な地域づくりに貢献する「(株)いろどり」を中心に広がる上勝町の取り組みに、これからも注目したい。