太田 順一
2011年09月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2011年09月30日 |
太田 順一 |
エネルギー・環境 |
地域環境 |
情報誌CEL (Vol.97) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
-農業で食べていきたい-
3K(きつい、汚い、格好悪い)仕事の代表のようにいわれてきた日本の農業――。
確かに就業人口は年々10万人ずつ減り続けていて、今では60歳以上が7割を占めるという衰退ぶり、高齢化ぶりだ。
しかし一方で、生き方として農業を選ぶ非農家出身の若者が、少数だが増えている。大木明佳(さやか)さんもそのひとり。
今春、2年間勤めた農場から独立して、大阪府高槻市の山間部にある畑で野菜づくりを始めた。
「私、ぐうたら百姓ですから」
朝は早くに畑へ出るのですか、と尋ねると、大木明佳さん(29)からそんな答が返ってきた。朝が弱いのだ。でもその分、夕方はいつも遅くまで仕事をする。
「十人十色。自分で考えて、自分に合ったやり方でやれるのが農業なんです」
大学生のとき、環境問題への関心から農業とであい、「自分で生き抜く力をつけよう」と百姓を志望。大阪・能勢の山中にある農業塾で2年間、合宿形式で学んだあと、農業法人で働く。そしてこの春、実家がある高槻で土地を借りて自分の畑をひらいた。
畑は1反5畝(15アール)。ひとりでやるに無理のない広さだ。少量多品種を方針としていて、夏場はキュウリ、トマト、ナス、カボチャなど15種を無農薬でつくる。手間がかかる野菜とそうでないのがあって、それをどう組み合わせて作付けするかがポイントだそうだ。
「これでよし、はないですね。失敗が多くて、日々勉強です」
しんどい作業も全然苦にならない。手をかけたらかけただけ野菜は応えてくれるからだ。それに、勝った負けたと競争にくれる世間から離れていられる。
ただ、ふと現実問題がよぎる。時間給で計算をしたら、萎えてしまうような金額なのだ。果たしてこれで食べていけるのだろうか――。
"ぐうたら"を自称するおおらかな大木さんだが、笑いながら胸のうちを明かした。
「農業を選んだ生き方と矛盾するようですけど、ジャンボ宝くじ、当たらないかな、って」