フローリアン・コールバッハ、豊田 尚吾
2012年01月05日作成年月日 |
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研究領域 |
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2012年01月05日 |
フローリアン・コールバッハ、豊田 尚吾 |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.98) |
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マーケティングを専門とする気鋭の研究者、ドイツ日本研究所のフローリアン・コールバッハ氏をお訪ねし、同氏が加わった国際的調査の成果などをもとに、倫理的消費の現状と未来についてお話をうかがいました。欧米におけるこれまでの倫理的消費の展開を踏まえながら、国際比較における日本の現在の状況と課題を検討、個人の消費が社会とどうつながっていくのかについて語り合う機会となりました。
-「倫理的消費」という概念をどう捉えるか-
豊田
今回の本誌の特集テーマである「倫理的消費」というのは、まだ普通の生活者が日常で使うような一般的な言葉にはなっていません。使う人によって意味が少しずつ違い、問題意識も異なることがあるようです。「ソーシャル消費」とか「きずな消費」とか、東日本大震災以降は似たような言葉も耳にしますが、コールバッハさんの定義される倫理的消費とは、どういったものかをお尋ねしたいと思います。
コールバッハ
倫理的、エシカルな消費活動というのは、私が考えている中では、ひとつの概念にまだ捉えがたいものです。マーケティングにおける定義もあれば、哲学的な定義も考えられます。
豊田
確かに幅広い概念ですね。まずマーケティングの定義についてはどうでしょう。
コールバッハ
マーケティングにおける倫理的消費には、いくつかの側面があります。例えば、いかに環境に配慮した消費行動をとるのかということ。具体的には、環境にやさしい洗剤とか、車で言えばハイブリッド車などを選ぶことですが、最近話題になっている節電もそうです。あるいは、省エネ型の電化製品の購入なども入ります。それとは別に、社会的なことに配慮した消費というものもあります。その一例がフェアトレードです。発展途上国で生産されているコーヒーやココア、チョコレートなどは、現状では生産者にとっては良い収入になりません。そこでNPOなどがフェアトレード・オーガナイゼーションとして、先進国で商品を公正な価格で売り、その分のお金を生産者に渡すものです。見方によれば寄付に近い活動ですが、これも倫理的消費の中に入ります。あるいは、生産プロセスにおけるエシカル(倫理的)な付加価値を考慮する場合もあります。特に、発展途上国の工場や農園で生産する場合、児童労働や過度の肉体労働などをなくす努力をしている企業がつくる商品を倫理的なものと考える。これはある意味では企業の社会的責任の問題です。また、逆に非人権的な状況で生産された商品を買わない「非消費」の行動をとることも倫理的消費の一形態と言えそうです。
豊田
もうひとつの哲学的な定義についてですが、それはどのような捉え方でしょうか。