株式会社パン・アキモト
2012年01月05日作成年月日 |
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2012年01月05日 |
株式会社パン・アキモト |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.98) |
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-非常食のリユースシステムでソーシャルビジネスを展開-
甘い香りがただようふんわりとしたパン。一口食べると、そのおいしさに自然と笑みがこぼれる。焼きたての風味が長持ちする「パンの缶詰」を製造・販売するのは、栃木県那須塩原市に本社を置く『(株)パン・アキモト』。
開発のきっかけは阪神・淡路大震災。当時、義援物資として2千個のパンを同社から搬送したが、被災者の手元へ届く頃には賞味期限が切れ、ほとんどが廃棄された。その苦い経験から、"保存性とおいしさ"を兼ね備えたパンの缶詰づくりに着手。防腐剤を使わずに3年の長期保存とソフトな食感を可能にした独自の製法を考案し、災害時の非常食として1996年から販売を開始した。
だが、食べずに賞味期限を迎えたパンの缶詰は廃棄せざるを得ないという問題に直面する。「パン職人として、つくったものはおいしく食べてほしい。また缶の処分には費用もかかる。そこで考えたのが、パンの缶詰を使った"リユースシステム"です」と代表取締役の秋元義彦さん。
「救缶鳥プロジェクト」と名づけたそのシステムは、3年の賞味期限が切れる1年前に、購入者からパンの缶詰を下取回収して海外へ輸送し、飢餓に苦しむ人々の食糧として役立てるというもの。運搬にかかる費用はすべて同社が負担し、また輸送した国・地域や個数などを明記した報告書を各顧客へ提示。再注文すれば値引き価格で購入できる特典もつけた。このような行き届いたサービスはもとより、"商品を購入して備蓄すれば国際貢献活動に参加できる"というメリットが消費者の心を動かし、発足から2年を経た現在、約500組の団体(企業・学校・その他施設)、約千人の個人がプロジェクトに加入している(2011年10月時点)。
また大災害が発生した際は、その時点で備蓄品の回収を要請し、国内外を問わず被災地へ即座に届けるという緊急時の対応も行う。2010年のハイチ大地震では、秋元さんはじめ従業員らの呼びかけにより加入者の大半が早期回収に応じ、2週間で約3万個のパンの缶詰が同社に集まり現地へ輸送された。東日本大震災においては、自社が被災していたにもかかわらず、本社工場にあった在庫と加入者からの回収品を合わせ、計2万個以上のパンの缶詰を被災地へ送り込んだ。
「今、日本人のボランティア精神は高まっています。善意を確実に役立てるため、支援やサービスの内容を明確にした"救缶鳥プロジェクト"は、誰もが安心して参加できる"ソーシャルビジネス"(※)です」
(※)社会的課題の解決を目的とするビジネスおよびそれに取り組む事業体。