TABLE FOR TWO事務局
2012年01月05日作成年月日 |
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2012年01月05日 |
TABLE FOR TWO事務局 |
住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.98) |
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-世界の飢餓と飽食の同時解決をめざす-
社員食堂のメニューに加えられた、野菜中心で低カロリーのヘルシー食。これを注文すると、売上げのうち20円が発展途上国の子どもたちに学校給食を提供するために使われる。このしくみを発案し、運営するのが特定非営利活動法人のTABLE FOR TWOだ。
活動の発端は、2007年の「世界経済フォーラム」で発展途上国の飢餓と先進国の飽食が討議されたこと。日本から参加したグループの中から、これらの同時解決をめざして現在のアイデアが生まれた。
従来の慈善事業と違うのは一方的な寄付ではなく、先進国側にもメタボ対策など健康上のメリットがある点。発足からわずか4年で、現在では約450社の企業や学校、レストランが参加しており、さらにアメリカをはじめ海外にも活動は広がっている。
その理由を代表の小暮真久さんは、「しくみがわかりやすく、誰でも参加しやすいからだと思う」と語る。当初は寄付金の一部を運営費に充てることに反発の声もあったが、後押ししたのは導入に関わった企業の担当者やメニューを作る人など一人ひとりの声だ。「良いしくみを続けるには運営費は必要だし、うちはこんな風に導入しています」と、参加企業から次の参加企業へと熱心に薦めてくれたという。
社員の参加率が高いためCSR活動として導入する企業が増え、近年では参加企業同士の交流にも力を入れる。「CSRの担当者は孤軍奮闘していることが多く、他社との情報交換はとても参考になると喜ばれます。点と点を線にして、もっと有意義な活動にしていきたい」という意向だ。
企業のほか、全国で千人以上の大学生が参加する学生団体を持つのも大きな特色。社会貢献という肩肘張った志というより、自ら楽しみながら学食や学園祭で実践したり、定期的な勉強会を開催したりと自立した組織へと育っている。また、保育園などの参加も徐々に増え、このしくみを通じて「感謝して食べる」「食べ残しをしない」など体験型の食育教育にも貢献。昨年末には世界の食事情がわかる絵本を出版し、多角的な展開が始まっている。
常にジレンマなのは、社会の役に立ちたいという情熱と、ビジネスとしての採算性の両立。一見難しいように思うが、「人には何かできることをしたいという根源的な願いがあり、活動に共感いただけると驚くほど力を貸してくれる」というのが小暮さんの実感だ。「自分たちができるのは誠心誠意、感謝を伝えることだけ」ということで、人間としての根本に触れる心のやりとりが多くの人を動かし、参加者の増加につながったといえるだろう。