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情報誌CEL

豊田 尚吾

2012年01月05日

ウェルビーイング実現のための倫理的消費に

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2012年01月05日

豊田 尚吾

住まい・生活

消費生活
ライフスタイル
その他

情報誌CEL (Vol.98)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

-はじめに-

 倫理的消費あるいはエシカル消費と聞いて違和感を持つ方も多いだろう。倫理という言葉はあまり消費と組み合わせがいいとはいえず、少なからず誤解を生んでしまう。筆者は倫理的消費というものが非常に重要な意味や可能性を持っていると考えている。しかし、ある場所で「倫理的消費という言葉」に対する激しい反発に直面し、それ以来、「責任ある消費」と言い換えて同じテーマを論じてきた、という経験を持っている。
 しかし、次第に「倫理的消費」が一般に受け入れられ始めているという認識もあり、今回、季刊誌「CEL」のテーマとした。実際にはまだそれほど広く認知されているわけではなく、グローバルに通用する厳密な定義が存在するということでもない。そこで、次節では議論のための共通の土俵を作るために、倫理的消費とは何かについて、本稿としての定義を明確にする。
 その上で、筆者が倫理的消費に関してどのような検討を行ってきたのかに関して紹介する。それを通じて今まで提示してきた論点を明らかにする。それらをふまえ、現在、倫理的消費の何が重要であるのかについての考えを示す。特に、消費の主体である、消費者、あるいは生活者にとっての目的をウェルビーイング(善き生、善い生き方。以下ウェルビーイングで統一)の実現、あるいはその向上という目で見た場合に、倫理的消費という考え方や行動がそれに大きく貢献する可能性を持っていることを主張するのが拙稿での目的である。

-倫理とは、倫理的消費とは-

 筆者は2001年ごろから消費と倫理の関係に関心を持ち、07年ごろから倫理的消費という言葉を用いてきた。その際、倫理という、知ってはいるけれども日常的に使うことはあまりない言葉を、消費者がどのように理解するかによって、倫理的消費がどう受け取られるかが大きく変わってしまう。したがって、このことについて語る場合には、必ず、倫理および倫理的消費の「定義」を明確にすることを常としてきた。
 通常、倫理というと、道徳とほぼ同じ意味で捉えられることが多い。そして、日本では戦前の修身などと関係付けられるのか、個人の自由を制限したり、強制されたりするイメージを持たれる場合が少なくない。非現実的な奇麗事だとか、建前だとかと受け取られる場合もある。倫理という言葉に直感的に反発を感じる人も多いようだ。
 しかし、ここで意味している倫理とはそのようなものではない。塩野谷(2002)の言葉を借りれば、倫理とは「社会における個々の対他関係にかかわって、個々人の間の対立を超えて、個々人の共存を可能にする規範」に他ならない。つまりルールだ。

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