石井 智
2012年01月05日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2012年01月05日 |
石井 智 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.98) |
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-震災後のスポーツ環境-
昨年、我が国に未曾有の被害をもたらした東日本大震災は、国民生活や企業活動はもちろんスポーツにも大きな影響を与えた。加えてグローバリゼーションが進む中、欧州の財政危機をはじめ世界経済の不安定化のあおりを受け、企業のスポーツ支援が目に見えて減少するなど、日本のスポーツを支える基盤も大きく揺らいでいる。
一方で、女子サッカー「なでしこジャパン」のワールドカップ優勝という快挙は被災地のみならず全国に大きな感動を与え、また、東京をはじめ大阪、神戸などで開催された大規模な市民マラソン大会も”復興支援“を合い言葉にいずれも成功をおさめている。このように、スポーツは今や単なる個人の「楽しみ」「気晴らし」だけにとどまらず、人と人のコミュニケーションを生み、絆を強めて生きる活力を与える存在として、その社会的な価値は一段と高まっている。また、スポーツはその集客力・発信力の大きさから、観光政策や地域振興策としても注目すべきコンテンツになっていると言える。
スポーツ基本法が施行され、基本計画の策定が進められようとしている今、経済面での逆風を跳ね返して日本における新たなスポーツ環境をつくり出していくにはどうすればよいか。本稿では大阪ガスにおける具体的な取り組みを紹介しながら、これからの社会におけるスポーツの役割と可能性について考えてみたい。
-スポーツの価値-
まず、スポーツの「価値」について整理しておく必要がある。一般に、スポーツは遊びや気晴らし、エキサイトメントの提供によって社会を活性化したり(社会的価値)、集団にチームワークを醸成して組織能力を向上させるといった(組織的価値)機能を持つ。さらに、体力向上はもとよりスポーツマンシップ等による倫理観の養成など心身両面での教育価値も有する。
中でも私が注目するのは、スポーツを通してフェアプレーやリスペクトの精神を育むという価値で、それこそが健全な青少年育成の根幹であると考える。「スポーツは子供を大人にし、大人を紳士にする」と言われるように、スポーツには人を育て成長させる力がある。子どもたちは憧れのアスリートに未来の自分を重ね、少しでもありたい姿に近づこうと努力する。自ら責任を引き受け、仲間を助け、また仲間に助けられながら友情や忍耐力を育む。これらはまさにスポーツならではの価値創造にほかならない。そしてそれを可能にするには、具体的な「場」の創出とそれを継続的に発展させる「仕組み」が必要となる。