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情報誌CEL

弘本 由香里

2012年02月14日

地域資源を活かす"つながり"の再デザイン − 持続可能なコミュニティ・デザインへ

作成年月日

執筆者名

研究領域

カテゴリー

媒体(Vol.)

備考

2012年02月14日

弘本 由香里

都市・コミュニティ

コミュニティ・デザイン
まちづくり
都市居住

情報誌CEL (Vol.99)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

-"つながり"の再デザインが求められる背景・方向性-

 グローバル化と経済格差の拡大や文化の均質化、それらと表裏をなして生じやすい社会的排除、あるいは世帯の小規模化や多様化によって進行しがちな孤立化、さらに著しい都市化の進行による地域の記憶の喪失や暮らしと環境の交わりの希薄化。このような、社会が構造的に抱えている課題が、個人と地域を大きく揺さぶっている。個々のアイデンティティ確立の困難さにはじまり、個人と地域を支えてきた"つながり"の弱体化が深刻な問題になってきている。ここでいう"つながり"とは、生活・地域・社会を支える目に見えない絆・基盤としての社会関係資本、すなわちソーシャル・キャピタルである。
 この個人と地域を揺るがす"つながり"の弱体化という課題を克服するには、「地域資源の活用」が鍵と考える。ここでいう"地域資源"とは、地域の特性を物語る自然、建築・街並み、生業、産物、人・組織、祭事、風習などを指すが、これらの資源を媒介に、人と人、人と地域の時間的・空間的“つながり”を重層的に紡ぎ、いのちと暮らしの基盤を再生することを“つながり”の再デザインの目的とする。そこで、具体的に大阪・上町台地界隈をフィールドとした実践を行ってきた。
 
-フィールドへ"つながり"を媒介する地域資源の集積・価値-

 実践内容を述べる前に、フィールドとしての上町台地界隈の特性の一端を紹介する。上町台地は、地形的にも歴史的にも大阪の背骨というべき場所である。北に大阪城・難波宮、南に四天王寺など、日本史を象徴する資源が存在している。多くの学校や医療施設も集積し、都心居住の人気も高いエリアである。
 近年は、多様な地域資源を再生・活用する動きが顕著だ。たとえば、空堀界隈の長屋再生、玉造界隈の伝統野菜の復興、寺院や神社を舞台にした文化活動やコミュニティ・サポート、新たなまつりの数々も生まれている。また、コリアタウンでの多文化共生の取り組みや、ゲストハウスでの多彩な人的交流なども見られる。そして、大阪ガスの実験集合住宅NEXT21が、まさにこの台地の中心部に立地している。
 こうした地域資源の再生・活用プロジェクトは、「歴史につながる生活実感の共有」「まちに住む文化の発展的な継承」「個人と社会を結ぶ共の場の形成」「風土に根ざす生活文化の再評価」「多様な文化・価値観の受容と共生」といった価値を生み出している。そこで形成される"つながり"が、過去・現在、新・旧、自・他、異・同といった対照関係にあるものの交わりを促進し、地域に潜在する課題の認識や解決への力を育む効果をもたらしている。

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