伊多波 良雄
2012年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2012年03月26日 |
伊多波 良雄 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.100) |
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-はじめに-
祭りと言えば、京都三大祭り、大阪三大夏祭り、東北三大祭りなどがすぐに思い出される。祭りは、最初は祭礼として行われてきたが、今では異世代間の交流、地域活性化、伝統文化の継承など、さまざまな機能を持つものとして期待されている。日本の祭りは、小さいものも含めると相当な数になると思われる。祭りを紹介している佐藤・保田編(2006)によると約千になる。このような祭りはどのような機能を持つのであろうか。祭りとソーシャル・キャピタルの関係を探りながら、祭りの持つ可能性を検証し、その経済効果を見てみる。
-コミュニティレベルでのソーシャル・キャピタル-
ソーシャル・キャピタルの代表的議論として、コールマン(1988)とパットナム(1993、2000)の議論を挙げることができる。
パットナムは、ソーシャル・キャピタルは互酬性、信頼性を伴う社会的ネットワークであると捉えている。パットナムは、イタリアの北部と南部の経済状態の違いを説明する際に、信頼と協調を基礎とした社会構造が北部にあり、このことが北部の南部に対する経済的優位をもたらしていると述べている。いわば、コミュニティのレベルでのソーシャル・キャピタルに注目している。
パットナムによると、ソーシャル・キャピタルには結束型と橋渡し型がある。結束型は、コミュニティ内部の結束を強化する機能を持っており、橋渡し型はコミュニティ間の関係を強化する機能を持つ。
● 結束型の祭り
通常、祭りには年寄りから子どもまでが参加し、このことによって住民の一体感が醸成される。このようなことから祭りは、パットナムが指摘するように結束型と捉えることができる。上野(2009)は、熊本市西部の銭塘校区自治協議会を対象としたコミュニティネットワークの研究で、次のように指摘している。それは、当該地域の自治会や宗教・祭りグループなどのグループ内で人々が出会う頻度を見ると、宗教・祭りグループは3番目に高い頻度であること、自治会と宗教・祭りグループの間に強い関連があり、宗教・祭りグループは自治会に次いで協議会構成グループ間を媒介する機能を高く果たしているということである。こういう指摘から、協議会をひとつの結束型ソーシャル・キャピタルと見た場合、宗教・祭りグループの活動はソーシャル・キャピタルの蓄積に貢献し、このことが当該地区のパフォーマンスを引き上げていると考えることができる。