木全 吉彦
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2012年03月26日 |
木全 吉彦
|
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.100) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
-はじめに-
今回の特集テーマが「"まつり"が育む地域の力」に決まったのは一昨年10月半ばでした。当初は本誌が創刊100号を迎えることへのささやかな祝祭という意味も込めて、歴史と伝統に彩られた「祭り」をイメージしていたのですが、3月11日の東日本大震災を受けてコンセプトを見直すことにしました。
震災直後には「発行がちょうど震災1周年の時期に当たるのに『お祭り』を取り上げるのは不適切ではないか」と、まったく別のテーマへの変更も考えました。しかし、厳しい現実に耐えて困難に立ち向かい、復興に向けて歩を進める被災者の姿や、全国から被災地に入っているボランティアの支援活動を見聞きして思い直しました。
古今東西を問わず、たとえ束の間ではあっても「祭り」は人々の気分を高揚させます。大災害は大きく深い傷を被災地に残しましたが、それを克服して二度と同じ轍を踏まないようにするには、日本全体がもう一度心をひとつにして課題に立ち向かい、生活基盤を支える自助・共助・公助のバランスの取れた仕組みを構築しなければなりません。「祭り」というテーマは生かしつつ、「祭り」が人々や地域社会に及ぼす力を多面的にとらえて評価し、社会の仕組みとして積極的に活用をはかることができないだろうか。それこそが震災後1年、「CEL」100号にふさわしいテーマではないかと思うに至ったのです。
-七夕祭り-
お盆前後、NHKのTV番組で被災地の夏祭りの様子をご覧になった方も多いのではないでしょうか。東北地方は祭りの宝庫といわれ、青森ねぶた、弘前ねぷたをはじめ、各地にさまざまな夏祭りがあります。七夕祭りもそのひとつですが、ここで取り上げられたのは、有名な仙台の七夕ではなく、陸前高田市高田町の「動く七夕」、気仙町の「けんか七夕」などです。大切なものを失い、打ちのめされて避難所や仮設住宅などへ散り散りになった住民たちが、生きることだけでも困難な時期に、いや困難だからこそ集い、力を合わせていつもの祭りをやり遂げようと立ち上がり、行動を始めます。
祭りを通じて自分たちの暮らし、わがまちの復興・再生を誓う住民たちの姿・言葉は尊く、気高く、見る者の心を打ちます。また、津波によって破壊され、瓦礫以外は何もないモノトーンの空間を、住民たちの懸命の修復作業によって華やかに甦った山車が通り過ぎる光景は、凛として美しく、力強さに満ちていました。