Dr.Ingrid Haslinger、山下 満智子、宇野 佳子
2012年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2012年03月26日 |
Dr.Ingrid Haslinger、山下 満智子、宇野 佳子 |
住まい・生活 |
その他 |
情報誌CEL (Vol.100) |
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歴史主義(1860年ごろから)
-過去への回帰-
過去への回帰という趣向は、「新しいことに挑戦することなくちょっと変わったことをやってみたい」という揺らいだ願望の表れであると言える。この趣向は、家の調度や部屋の飾りつけ、テーブルセッティングに顕著であった。
19 世紀の半ばごろ、人々はそれまでのビーダーマイヤーという時代とは異なる、新たな芸術的趣向に向かおうとしていた。そして過去への回帰を意識した多くのものが作られた。ゴシックやルネサンス、バロックやロココといった様々な様式、さらにフランスのルイ15世様式やルイ16世様式も取り入れられた。この傾向は当然食卓にも見られ、それはまずブルジョワと呼ばれる人々から始まった。当時の最新流行のテーブル飾りと昔のバロックやロココ様式の陶磁器類、センターピース、カトラリーが、何の抵抗もなく、取り合わせて用いられた。テーブルのクロスも必ずしも白である必要はなく、陶磁器の模様とよく合う柔らかいパステルカラーのものが、客を招く際にもごく普通に使われた。
-ヘレンドの食器-
多くの食卓は、ハプスブルク帝国を代表する企業であるヘレンド社の食器で整えられた。ヘレンドは、1864年に閉鎖されたウィーン工房の陶磁器作りを継承しており、古伊万里などを手本にした食器に加えて、バロックやロココ様式の食器セットも生産していた。
バロック時代の食卓デコレーションを偲ばせる糖菓類や銀製の果物かごが、ルイ16世様式の簡素なセンターピースとともに、食卓を効果的に演出した。ピラミッド型の糖菓は、白いライラックやリンゴの花で飾られた当時の食卓の食器やテーブルクロスによく調和した。
-アルパッカの食器-
19世紀後半において目新しかったのは、銅、ニッケル、亜鉛から成る「アルパッカ」で、銀メッキを施して使われた。ベルンドルフ(ニーダーエーストライヒ)のアルトゥール・クルップは、この時代の趣味に合わせて、ルネサンスやバロック、ロココ、ルイ16世様式、アンピールなど実に様々な様式のものをアルパッカで生産した。