岩前 篤
2012年07月10日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2012年07月10日 |
岩前 篤 |
エネルギー・環境 |
省エネルギー |
情報誌CEL (Vol.101) |
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重要なのは省エネルギー化と健康性サポート
今、ようやく住宅におけるエネルギー消費の抑制に対する関心が本格化している。70年代のオイルショックに始まり、90年代からの地球環境問題への対応として、住宅の断熱化はその重要性を常に時代とともに求められてきている。
東日本大震災は甚大な災厄をこの世界にもたらしたが、中でも原発に対する信頼性を根本から覆した点で、今後の人類の発展・継続に大きな意味を与えた。急速に加速する脱原発の流れの中で、基本的には普遍の温暖化ガス排出抑制をも満たす代替エネルギーの開発は急務であるが、同時に、使用するエネルギー全体を減らす取り組みも重要である。むしろこちらの方が重要である。
短期的には、エネルギー使用の抑制は、日常社会において、様々なことがらを‘我慢’することで、なにがしかは達成できる。一方で、満ち溢れたモノの中で、現在の日本は、おそらく人類史上、最も幼小児の死亡率が低い社会であると言える。これを支えてきたモノやエネルギーについては単純に減らせばよいというわけにはいかないであろう。また、単なる我慢は、次代を担う世代の、未来に対する夢、モチベーションの減少に作用する可能性もある。高齢化対応、さらに、これらの陰で確実に進行する少子化という、より本質的な問題への対応と合わせて、このエネルギー危機を乗り越える必要がある。
本稿では、我慢に依存しない、仕掛けとしての住宅の省エネルギー手法と、高齢化社会の中でより重要となる健康性のサポート手法についてその概要を示す。実はこの2つは、住宅の高断熱化という1つの手法で、共に満たされることが期待される
暖冷房エネルギーの抑制を高断熱化で実現
20世紀の住宅の省エネルギー化は、日常生活において2〜4割を占める暖冷房のエネルギー消費の抑制を主に意味していた。21世紀に入り、これに加え、残りの6割以上を占める給湯・調理や照明・家電関係についての省エネルギー化が対象となってきた(さらに、再生可能エネルギーの利用活性化として、太陽光発電パネルや風力発電装置の導入が進められてきているが、これは省エネではないので本稿の主な対象ではない)。給湯においては、使用者の使用感を操作することで少ない湯量とさせる、節湯型蛇口という、極めて明快な解答が示され、これの導入効果は非常に大きいとされる。照明においては、発光効率に優れたLEDが、従来の白熱電球に置き換わろうとしている。