岩船 由美子
2012年07月10日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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2012年07月10日 |
岩船 由美子 |
エネルギー・環境 |
省エネルギー |
情報誌CEL (Vol.101) |
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はじめに
エネルギー問題の根幹は、需要である。暖かさ、涼しさ、明るさ、清潔さ、便利さ、楽しさ、移動手段、そういったものを追い求めた結果が今の生活であり、それに伴って必要とされるエネルギーをどのように供給するか、ということがそもそもの問題である。家庭の外で消費されるエネルギーについても同じことである。基本的に人間が必要とするサービスや財を提供するために、産業部門があり、業務部門があり、輸送部門があり、それぞれに多くの資源やエネルギーが消費される。
私たち日本人はとても豊かに暮らしている。普段の生活でエネルギーの使用に制約を感じることはまずない。しかし、昨年の大震災以来その事情は少し違ってきている。福島第一原子力発電所事故により、原子力発電への信頼が大きく損なわれ、電力会社は、これまでのように需要家がほしいだけの電力を供給できる能力が維持できなくなってしまった。今後どうなるかは国の政策や電力会社の対応によって決まるだろう。現段階で将来のエネルギー需給がどうなるかを正確に見通すことはできないが、ただ確かにいえることは、私たちは天井を見た、ということである。多くの人が、エネルギーが有限であることに気がついた、ということである。
2011年緊急節電
昨夏求められた「節電」は、停電回避のため、電力ピークの山を減らす目的の電気の使用削減であり、「省エネ・CO2削減」のための節電とは違うものであった。例えば、電気からガスや石油への代替や、電力供給能力に余裕のある休日や早朝・夜間への需要シフトなど、場合によっては増エネ・CO2増となる可能性もあるような施策も重要であった。計画停電こそなかったものの、4月・5月から節電を根付かせ、節電を需給計画に盛り込むことで、極端な対策をとることなく経済活動への影響を最小限に抑制すべき、という我々の呼びかけは残念ながら現実とはならなかった。東日本では大口需要家向けに電気事業法第27条による電気の使用制限令が発動され、結果、東京電力の場合で大口需要家の最大電力が29%削減された(全体で18%、小口需要家19%、家庭6%削減)。東北電力の大口需要家においても同様に、目標の15%を大幅に上回る削減が達成された。これらの削減は、主として、生産調整、夜間休日への勤務シフト、自家発電の活用によるものであり、生産・産業活動に多大な影響があり、かつ相当の対策費用(数億円〜数十億円の例もあり)も発生したという報告がな
されている。