松村 暢彦
2012年07月10日作成年月日 |
執筆者名 |
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2012年07月10日 |
松村 暢彦 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.101) |
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環境配慮と脱クルマへの動き
最近、携帯音楽プレーヤーを聞きながら街中を歩いている人や派手な服に身を包み颯爽とスポーツ自転車で走り去るサイクリストを目にすることが多くなった。すがすがしい空気を吸いながら、普段は通り過ぎてしまう何気ない街の風景を眺めたり、季節のちょっとした変化に気づいたりするのは、心身に安らぎを与えてくれる。
平成21年に内閣府によって実施された「体力・スポーツに関する世論調査」によると1年間に行った運動・スポーツはウォーキング48・2%(複数回答)で他の項目を圧倒している(図1)。しかも年齢、性別を問わず行われており、人を選ばず、手軽に行うことができる運動として定着していることがうかがえる。
自転車についても電動アシスト自転車が少し前まで高齢者や幼児をつれた母親向けだったのが、特に坂が多い地域では、オシャレなモデルの開発もあいまって高校生など多様な層にも広がりつつある。自転車国内販売動向調査((財)自転車産業振興協会)によると、1店あたりの電動アシスト自転車の販売台数は、平成15年は9台/年であったものが平成23年には17台/年と大幅に増加している。このように以前は年をとって体力がなくなると自転車をあきらめていた人や坂が多く地形的に自転車が不向きな場所であっても、電動アシスト自転車という有力な選択肢が増えた。
こうした徒歩や自転車が増えつつある背後には、健康に気をつける人が増えたのに加えて、地球温暖化の防止や節電、省エネルギーへの協力から環境に配慮した行動をとろうと意識的に日常の生活行動を変えた人も多いだろう。特に低環境負荷型の交通の実現に向けて自転車は有力な選択肢であり、パリに導入された大規模なレンタサイクルを例に出すまでもなく、日本にも地域に定着したレンタサイクルシステムは数多く、コミュニティサイクル(図2)といわれる乗り降り自由のシステムもみられる。
最近では、道路における自転車の走行空間の位置づけも見直されつつあり、自転車によるまちづくりも進みやすい環境が整ってきた。それに加えて、まちの賑わいづくりの一環として、クルマでアクセスしやすい郊外の大規模ショッピングセンターではなく、中心市街地の小売店舗が集積した地区を利用してもらうように、歩道の整備や車両の通行制限などが進められている。今後、クルマからの転換先として自転車はますます有力な選択肢となっていくであろう。