枝廣 淳子
2012年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2012年11月01日 |
枝廣 淳子 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.102) |
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東日本大震災以降、家庭で使うエネルギーの今後に関心を寄せる人たちが増えています。そこで今回は市民目線で国策のエネルギー問題に取り組み、「わが家のエネルギー自立」を提唱する環境ジャーナリストの枝廣淳子氏に「暮らしを支えるエネルギーの手綱を自分で握る」ために、今できること、すべきことなどについてうかがいました。
―「エネルギー選択の自由」の意味を自覚する―
―これまで、意識せずにエネルギーを使ってきた生活者も、東日本大震災以降ずいぶん変わってきましたね。
日本のエネルギー政策は、これまで主に国やエネルギー事業者主体で進められ、生活者がそこに口をさし挟む余地はなく、生活者自身もまたそれを強く求めてはきませんでした。しかし東日本大震災は私たちに「コンセントの向こう側」に何があるかを明らかにし、それまで当たり前に思っていた快適な生活の有り難さと脆さを思い知らされました。とくに首都圏では計画停電が実施され、電力供給者の都合で利用者が振り回されるという経験をした多くの人たちが「電力を自分で選べればいいのに」と思い始めました。そうした流れを踏まえると、国民がこれからエネルギーに向き合う態度として大事なのは、「この電気はどこから来るのだろう」「この仕組みはどうなっているのだろう?」といった小さなクエスチョンも看過せず、まずは知り、考えることだと思います。
―先ごろ経済産業省は家庭向けも含めた電力販売すべてを自由化する方針を固め、いよいよ家庭でも「電力の自由化」が現実のものになってきました。
エネルギーに関する制度改革はこれから確実に進んでいくと思いますが、重要なのは制度設計をどうするかというテクニカルな問題より、その背後にある国民(生活者)とエネルギーの関係性を、よりよい方向へ変えていくことです。社会学者の宮台真司さんが指摘するように、今までの日本は「任せて文句を言う社会」でしたが、これからは「引き受けて考える社会」になっていくべき。つまり「任せる=依存」から「引き受ける=自立」への転換ですね。「選択の自由」にはリスクと責任がついて回りますが、これまでの日本社会ではそれらを回避する傾向にあったと思います。
―「選びたい」という意志を生活者が明確に持たないと、制度だけ変えても意味がないと……。
「選べるけど文句を言う」人たちばかりでは仕方ありませんから。制度改革を求めていくのも大事ですが「選択の自由」の意味を国民の側がしっかり自覚することが前提です。その点は東日本大震災以降、リスクがあっても自ら電力を選びたい、という人たちが確実に増えてきましたから、大いに期待しているところです。