中橋 雄
2012年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2012年11月01日 |
中橋 雄 |
住まい・生活 |
その他 |
情報誌CEL (Vol.102) |
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―はじめに―
ICTは、"Information and Communication Technology"を略したもので、「情報通信技術」と訳される。情報処理や通信に関わる技術の総称であるが、そうした技術を活かした機器や社会基盤を指してICTと呼ぶこともある。
この言葉をよく目にするようになったのは、インターネットに接続可能なパソコン、電話だけでなく情報端末としての機能をもつケータイなどが急速に普及した影響が大きいと考えられる。多様な形でコミュニケーションを図るための技術であるICTの位置づけが、身近に感じら
れると同時に社会生活に不可欠なものであると受け入れられたからであろう。
そうしたICTを使いこなすには、単なる機器の操作技術に留まらないメディア全般に対するリテラシー(属する社会の発展に資する読み書きなどの能力)が必要である。ここでは、すべての世代がICT時代のメディア・リテラシーを高めるために必要なことについて考えていきたい。
―誤解されたメディア・リテラシー誤解されたメディア・リテラシー―
メディア・リテラシーという言葉は、誤解されている場合が多い。大学の講義で学生に「メディア・リテラシーとはどのような能力か?」と問うと「メディアが伝える情報の真偽を見抜く力」や「メディアを批判する力」だと認識していることが少なくない。こうした回答がまったくの間違いとはいえないが、これは一面的な捉え方にすぎない。このような偏りは、1990年代に頻発したテレビ番組での過剰演出や誤報などに関わるマスメディアの不祥事に対して「受け手も慎重に読み解いて判断して欲しい。そのためにメディア・リテラシーが必要である」とマスメディアが喧伝したことによるものであると考えられる。
ICTと上手く付き合いながらリテラシーを育んでいくためには、メディア・リテラシーの概念を理解することが重要である。これまで様々な研究者がメディア・リテラシーを定義してきたが、それらを踏まえて私なりに短く再定義すると次のようになる。
メディア・リテラシーとは、「(1)メディアの意味と特性を理解した上で、(2)受け手として情報を読み解き、(3)送り手として情報を表現・発信するとともに、(4)メディアのあり方を考え、行動していくことができる能力」である。
メディア・リテラシーの必要性が説かれた経緯には、時代背景や地域による様々な状況があった。そのことを考えるならば、このような少し幅広い概念として認識しておくことが望ましいと考える。