木全 吉彦
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2012年11月01日 |
木全 吉彦
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.102) |
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―「流星号、応答せよ!」―
"スーパージェッター"は1965〜66年に放映されたTVアニメの主人公で、"一千年の未来"からやって来た"知恵と力と勇気の子"が、悪者を相手に大活躍する筋立てです。タイムマシンでもある"流星号"は電子頭脳(コンピュータ)を内蔵し、自動操縦で水・陸・空を自在に飛び回るスーパーカーのような形をした乗り物です。腕時計にアンテナを付けたような超小型通信機に向かって話しかけ、愛車(?)を呼び出すのがかっこよくて、小学生だった私も真似をして遊んでいたことを思い出します。同時代の"鉄人28号"や"鉄腕アトム"と違って、主人公がロボットではなく(未来から来たとしても)生身の人間であることに親近感を覚え、「あったらいいな」という夢がそのまま形になったような様々な装備に目を見張りました。
爾来50年、マッハ15で飛ぶ?流星号?はさすがに実現していませんが、コンピュータ搭載は当然のこと、自動操縦機能付きの自動車も間もなく実用化されそうな勢いです。また、超小型通信機や音声認識・遠隔操作コントローラ、TV電話などはどれも最近のスマートフォンに搭載されている機能です。デジタル・ネイティブと呼ばれる若い世代にはピンと来ないかもしれませんが、この50年ほどの間に科学技術が社会にもたらした変化には驚くべきものがあります。
―ICTの光と影―
情報誌「CEL」102号の特集テーマは「ICTのエネルギーが社会をつなぐ」です。ICTはInformation & Communication Technology(情報通信技術)の略。日本ではIT(情報技術)ほど人口に膾炙していませんが、情報と通信をセットにするのが世界標準です。情報技術の発達は、文字や数値から高精細の音声・画像データに至るまで、記録・検索・計算・閲覧など人間の情報処理能力の限界を取り払いました。一方、通信技術の進歩は、情報をやりとりしたり共有する際の空間的・時間的制約を一気に取り去り、?いつでも、どこでも、誰とでも?つながることを可能にしたのです。ICTが人々の「できたらいいな」を実現することで世の中が便利になり、新たな「できたらいいな」を呼び起こし、さらなる技術革新を招来するというサイクルが今も回り続けています。「必要は発明の母」ですが、「発明は必要の母」でもあるのでしょう。
しかし立ち止まって考えてみると、私たちは「ICT依存社会」にどっぷりつかってしまったようにも思えます。今この瞬間にインターネットが使えなくなったら、ケータイやスマートフォンがプツンと切れて復帰しなくなったら、そして様々な社会インフラを制御しているコンピュータが暴走したら…。エネルギー同様、情報・通信サービスが安定的に提供されなければ、現代社会は大混乱に陥ります。今後も予想される情報量の増加に対応するために、継続的な情報通信インフラ投資は不可欠であり、万全のセキュリティ対策を打つことも必須ですが、そのために増大するコストを持続的に賄うことは可能なのでしょうか。使い手側もICTに過度に依存しないという心構えを持ち、どこかで歯止めをかけることを考える必要があるのではないでしょうか。資源・エネルギーの有限性からは、増え続けるICT用のエネルギー消費量も気になるところです。