はた よしこ
2012年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2012年11月01日 |
はた よしこ |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.102) |
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「絵を描くというのは、特別の学校で学ばなければならない」と思っている人が大半だろう。そんなことには全くとらわれず、また誰からも学ばず自己流の方法で、独自の世界を表現している人たちがいる。
それは「アール・ブリュット」と呼ばれている。まだ聞き慣れない言葉かもしれないが、近年日本でも全国の美術館などで多くの展覧会が開かれ始めた。この言葉はフランス語で「生の芸術」という意味で、約70年前フランスの一人のアーティストが提唱し、日本でも近年少しずつ注目され始めた。
人は本来誰でも「自分を表現する自由」がある。しかし、既製品の文化の中で生活している私たちは、このとらわれからなかなか踏み出せない。アール・ブリュットの作者は、知的障害者や精神病者など、この社会から距離が置かれている人たちが多い。そういう人たちは、他人に惑わされずに自分の中にある強靭な空想力や夢や記憶などを、自己流の方法で「カタチ」にしている。それは絵であったり、粘土や拾い集めたゴミなどを使った造形物であったりする。その表現は私たちの想像を遥かに超えて、驚くほどの独創性にあふれている。
何でも既製品の中からゲットできてしまう今の時代の中にあって、人々はこのような表現との出会いによって「自分が自分であること」の根っこを思い起こすスイッチに出会うのだろう。アール・ブリュットは、今や難解になりすぎてしまった現代のアートを越えて、ストレートに私たちの心の深い場所に揺さぶりをかけてくる重要なアートとなるだろう。