山口 泰雄
2013年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2013年03月01日 |
山口 泰雄 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.103) |
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―はじめに―
近年、国際的にスポーツの価値が再評価されている。青少年の健全育成や体力の向上だけでなく、スポーツによる地域振興や経済波及効果、健康で活力に満ちた長寿社会の創造、スポーツによる国際貢献や開発支援など、スポーツの社会的、文化的、経済的価値への期待がますます高まっている。このような背景の中、スポーツ界における新たな課題に対応するために、スポーツ振興法が50年ぶりに改正され、新たに『スポーツ基本法』が2011年8月24日に施行された。
2012年3月には、スポーツ基本法の理念を具体化し、今後のわが国のスポーツ政策の具体的な方向性を示すものとして、国、地方公共団体及びスポーツ団体等の関係者が一体的になって施策を推進していくために、『スポーツ基本計画』が策定された。その基本理念は、「年齢や性別、障害等を問わず、広く人々が、関心、適性等に応じてスポーツに参画することができるスポーツ環境を整備すること」、すなわち生涯スポーツ社会の実現にある。
本稿では、生涯スポーツが人と地域にもたらす楽しく健康な生活を社会学的視点から考察してみたい。
―生涯スポーツとは?―
生涯スポーツは、1988年に当時の文部省体育局に「生涯スポーツ課」が設置されたことにより、その振興が始まったといえる。 文部省は、「いつでも、どこでも、誰にでも」というスローガンにより、多様なニュースポーツの普及や生涯スポーツコンベンション、全国スポーツ・レクリエーション祭の開催により、生涯スポーツの理念とプログラムを広げてきた。生涯スポーツの定義に関するコンセンサスはないが、筆者は「幼児期から高齢期に至る各ライフステージにおいて、個人の年齢、体力、選好にあった運動やスポーツを継続して楽しむこと」(山口1994)と定義した。
生涯スポーツにおいては、「記録や勝敗」といった結果にこだわらず、「プレイや交流」というプロセスを楽しむことが大切である。結果にこだわらず、プレイや仲間との交流を重視することにより、スポーツを継続して楽しむことができる。継続して実施することにより、運動の技術や効果も高まり、健康にも良い影響を及ぼすようになる。楽しみながら継続できたとき、スポーツは生活スタイルの一部になり、初めて生活文化とよばれるようになる。
図1は、生涯スポーツの3条件を示している。スポーツ活動の中で、楽しさや満足感を経験することがスタートである。これらの研究成果によれば、楽しさや満足感を経験した者は、のちのライフステージにおいても、継続してスポーツを実施する傾向が強いからである。また、継続して実施しなければ、生理学的な効果や運動学的なスキル向上が得られず、仲間との交流やふれあいもなく、生きがいにならない。