木全 吉彦
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2013年03月01日 |
木全 吉彦
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.103) |
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―CELとスポーツ―
昨年のロンドン・オリンピックでは、世界中がトップアスリートたちの一挙手一投足に熱狂し、勝利に酔い、敗北にため息をつきました。日本も多くの種目で好成績を上げ、メダルの獲得数は歴代1位。特に女子選手の活躍が目立ちました。その余韻がまだ冷めやらぬなか、これから半年後の9月7日には2020年のオリンピック開催地が決まります。1964年以来、実に半世紀ぶりに東京が選ばれれば、開催までの7年間、スポーツへの関心はさらに高まって行くものと思われます。
だからというわけではありませんが、本号の特集ではスポーツを取り上げ、その多様な機能と可能性について、文化的側面、生活的側面、社会的側面という3つの切り口から各界の識者に論じていただきました。
老若男女を問わず、生活者にとって身近な関心事であり営みでもあるスポーツですが、実は、これまで本誌では正面から取り上げたことはありませんでした。しかし、101号から新たなスタートを切る情報誌CELの企画を練る際に、これからの生活・社会を変える‘エネルギー’として‘ICT’とともに浮かんだのが‘スポーツ’だったのです。
きっかけのひとつは2011年10月の第1回大阪マラソンです。沿道の応援や商店街の人たちの炊き出しや差入れ、ボランティアによる運営サポートで盛り上がり、大成功を収めました。また、ここ数年、各地でトップアスリートが企画・運営するスポーツイベントが多くの観客を集めていることからも、スポーツの持つ魅力を再認識させられました。
ややもすればクローズドな‘界’をつくって閉じこもりがちだったスポーツが、殻を破って、他のさまざまなプレーヤーと繋がって動き出したように見えます。人と人、人と地域を結びつけ、地域・国の一体感を高めるソーシャル・キャピタルとしての評価を行い、その可能性を考えてみたい。そんな思いでこの特集を組みました。
―生活行動としてのスポーツ―
人はスポーツを趣味や健康管理の一環として自ら行い、あるいは娯楽としてプロ、アマの競技を観たり応援したりします。すなわちスポーツは生活者の生活行動のひとつです。それでは、生活のなかでスポーツの位置づけはどう変わって行くのでしょうか。
総務省の平成23年社会生活基本調査(2012年7月)によれば、1年間に何らかのスポーツを行った人の割合(行動者率)は63・0%で5年前に比べ2・3ポイント低下しています。年齢別には65歳未満のすべての階層で低下する一方、65歳以上では上昇するという際立った傾向が読み取れます(上図)。種類別には‘ウォーキング・軽い体操’が35・2%と最も高く、以下‘ボウリング’、‘水泳’、‘器具を使ったトレーニング’、‘ジョギング・マラソン’、‘登山・ハイキング’、‘サイクリング’(以下略)と続きます。このうち5年前に比べて行動者率が上がったのは‘ジョギング・マラソン’、‘ウォーキング・軽い体操’、‘サイクリング’の3つのみで、その他は軒並み低下しています。
健康管理のためのストイックなエクササイズと呼べそうなものが上昇し、球技のようにゲーム性、競技性が高く、チーム・ワーキングを求められるものが低下するという傾向が表れています。