太田 順一
2013年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2013年03月01日 |
太田 順一 |
エネルギー・環境 |
地域環境 |
情報誌CEL (Vol.103) |
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10代の若い人たちは農業をどう見ているのだろう―― それを知りたくて、大阪府立農芸高等学校(堺市三原区)を訪ねた。9 万平方メートルもの広い敷地に田畑や果樹園、牛舎豚舎、食品加工所などいろんな施設が並ぶ。ここでは普通校のような座学ではなく、体を動かしての実践が主体である。モットーは「校内と校外との両方で生徒を育てる」こと。だから野菜を朝市で販売したり、移動動物園を幼稚園でひらいたりと、若者たちは積極的に街に出て農業を通じて社会とふれあっていた。
池島颯くんと硲田大貴くんは資源動物科・養豚班の3年生。ともに動物好きなこともあって農芸高校に入った。が、ペット感覚の「好き」だけでは通用しなかった。
「今はもう慣れたけど、においがきつくって。最初はえずきました」(池島)
相手は生きものである。毎日の餌やりは当番制で、休日にも2、3回は学校に出てこなくてはならない。そのうえ解体の実習では、包丁を握って鶏を屠りもする。
「僕ら、いのちを食べてたんだ、って気づくんですね」(硲田)
出産に立ち会った子豚が成長して半年後には肉となる。初めは悲しかったが、しかし今では「自分たちが世話をして売れる豚に育てあげたんだ」との達成感がつのる。
日々の飼育はひとりではできない。班の皆との協力が不可欠だ。そのうえ豚肉の販売実習では、デパートの売り場に立って見知らぬ人に声をかけねばならない。
「人とコミュニケーションする力が身につくんです。この経験は大きいです」(池島)
ハイテク農芸科・野菜部3年の池?魁人くんは、人と協同することの楽しさを知ったという。クラスの40人が水田に並んで苗を手植えし、秋には再び全員が並んで手刈りをする。泥んこになって作業に精出すことで、皆が仲良くなっていくのだ。
「おかげで、人前でしゃべるのが苦手だったのに、委員をするようにもなりました」
農家の子弟はまれな農芸高校にあって、池?くんの家は兼業農家。卒業後は農業系の大学に進み、将来は農業人となって高品質な野菜栽培をめざす。祖父が畑で催すトマトなどの野菜の直売会に、いつも長蛇の列ができるのを見てきているからだ。
「スーパーで買うほうが安いはずなのに。しかもお客さんのほうが、おいしい野菜をありがとうって、逆に祖父に礼をいってる。そこに、僕はやりがいを感じるのです」