弘本 由香里
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2013年11月01日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
都市居住 |
情報誌CEL (Vol.105) |
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一見「地縁」とは無関係に思えるマンション。しかし、東日本大震災後、地域社会との関係性を構築することが急務となってきている。防災・減災のために、マンションはどんな役割を果たせるのだろうか。マンションと地域社会、双方の観点から考察する。
地域における減災文化の創造とマンション居住について
阪神・淡路大震災が提起した減災サイクルと生活防災
1995年1月の阪神・淡路大震災から15年を経た2010年1月、本誌91号で「生活者にとっての減災」を特集した。災害をいかにして防ぐかに重点を置いた「防災」のみならず、災害による被害をできるだけ少なくする「減災」という考え方を提起し、当事者としての生活者がいかに「減災社会」を構築していくべきかについて問いかけた。
同特集のなかで、渥美公秀氏は「防災という言葉を減災という言葉に置き換えただけでは、減災という言葉の含意を十分に活かせない。減災という発想は、災害が起こる前の備えとしての防災以外にも、災害が発生した後の救援や復旧、復興にも活かせるものである」と指摘している。減災を、災害発生直後の救急救命・安全確保にはじまり、ライフラインの復旧・生活再建、復興まちづくり・生活文化の再生、生活防災・減災まちづくりに至る、一連の「減災サイクル」として捉える必要性が認識できる。
また、矢守克也氏は「生活防災」を提唱し、「〈生活防災〉とは、一言で言えば、生活総体(まるごとの生活)に根ざした防災・減災実践のことであり、生活文化として定着した防災・減災と言ってもよい」としている。災害列島とも呼ばれる日本にあって、先人たちは、自然がもたらす恵みとリスクとともに生きる、知恵としての災害文化を育んできた。しかし、現代の都市生活に根ざした災害文化=減災文化というものが生み出されていたかといえば、阪神・淡路大震災が起きるまで、存在しなかったといっても過言ではないだろう。
そして、減災文化を構想するには、現代の都市の主要な住まい方のひとつとなったマンション居住を、地域と防災・減災の文脈のなかでどう位置づけるかが大きな課題のひとつと言える。