鈴木 隆
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2014年07月01日 |
鈴木 隆
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住まい・生活 |
その他 |
情報誌CEL (Vol.107) |
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近代科学の考え方の根本にある機械論。その限界が各所に現れてきている昨今、「生命論」が注目を集めるようになってきている。後編の今回は、機械論と生命論それぞれの特徴をより詳細に見ることで、どのように両者を使い分けていけばいいのかを探る。
前回は、パラダイムのはたらき、機械論と生命論の歴史的変遷について述べた。引き続き、今回は、現代の機械論と生命論の特徴、使い分けについて述べる。
現代の機械論と生命論の特徴
現代における機械論と生命論の特徴は、Chart4のようなパラダイム・シフト、すなわち以下の6点の転換として対比できる。
特徴1:世界観
「機械的世界観」から「生命的世界観」へ
世界を機械として見立てるのか、生命として見立てるのかである。
特徴2:方法論
「還元論、分析」から「全体論、解釈」へ
機械論の「還元論(要素還元主義)」は、部品を組み立てれば機械ができるように、全体は部分の総和であり、部分に分けて各部分を調べれば、全体も説明できる、とする。具体的な手法である「分析」では、全体
を分割し単純化した部分について実験や観察を行い、一般的な原因や法則を導き出す。解明できた部分を集めれば(総合)、全体の説明となる。
一方、生命論の「全体論(ホーリズム)」は、物質を寄せ集めても生命ができないように、全体は部分の単なる総和ではなく、全体は全体としての関係性を捉えて、統合的に理解しなければならない、とする。具体的な手法、というより根源的な認識の基盤である「解釈」では、歴史的な状況、伝統的な解釈に自らが規定されていることを常に自覚し、現在の問題意識から過去の事柄の意味を未来に向けて理解する。部分は全体から理解されねばならず、全体は部分から理解されねばならない。また、いかなる解釈も、その解釈に先行して理解されていなければならない。理解とは、過去の内容を現在の状況に適用することで、過去と現在の地平が融合し、新たな意味を生成する対話の過程なのである。