竹内 昌義
2014年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2014年07月01日 |
竹内 昌義 |
エネルギー・環境 |
省エネルギー |
情報誌CEL (Vol.107) |
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エコハウスの定義は人によってさまざまだが、一言で言うとエネルギーの多くかからない家と言えるだろう。それを実現するためには、風土や気候にあわせて日射の取得や通風をよく考える必要がある。それは、ちょうど伝統的な家に似ている。掃き出し窓があり、庇がきちんととれていて、風通しのいい空間だ。冷暖房がない時代は、地域の気候を利用してそういう家が建てられていた。ところが、エアコンなどの機械が発達した結果、どこでも同じような家がどんどん建てられた。これは技術の進歩とも言えるが、家そのものの環境的な側面は退化してしまった。本来的には、エコハウスは伝統的な建て方に沿い、加えて現代の技術である冷暖房を少しだけ使いながら、環境をコントロールすることが求められる。だが、冷暖房をする観点から言うと、伝統的な家の断熱性能はないに等しい。なかにはそういう以前の暮らしに戻ればいいという考え方もある。しかし、古い伝統や歴史を踏まえつつ、新しい技術との融合を考える方がいい。
日本の家は、冬は寒すぎて、健康を損ないかねない。ヒートショックという言葉をご存知だろうか。暖かい居間から寒いトイレや浴室に行くことで血流が乱れ、心臓や脳に重篤な疾患を起こすことだ。年間1万7000人(2011年)が亡くなっているという。女性の冷え症、高齢者の高血圧なども寒い家が遠因である。
また、日本のエネルギーのほぼ3分の1、電力の6割程度が建物で消費されている。冬季になると必ず暖房を使うことを考えると、九州や沖縄などを除く、ほとんどの日本の家は何らかの対策を必要とする。その対策は断熱の強化である。温暖な日本であればこそ、少しの対策で家の消費エネルギーを簡単に減らすことができる。
断熱の強化は快適性をも増す。このことが実は最も重要だ。人が部屋で過ごす時の体感温度は、壁や天井などの表面温度と室温の平均値であると言われる。例えば夏。40℃にまで達するような室外のコンクリートや鉄板むき出しの屋根の下にはいられないが、木陰であれば快適に過ごせる。木は水分を蒸散し、表面が気温と同じ温度になっているので、体感温度と木の表面の温度が等しくなり、快適なのだ。冬季、断熱されていない日本の家の壁、床、天井の温度は室温に比べ低い。