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情報誌CEL

井戸 理恵子

2014年07月01日

コラム「日の国ニッポンの理」火でまつる夏

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2014年07月01日

井戸 理恵子

住まい・生活
都市・コミュニティ

ライフスタイル
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その他

情報誌CEL (Vol.107)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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火山大国・日本には、火を噴く山があちらこちらで眠っています。そんな火の山が噴火し、真っ赤に燃えたぎるマグマを泉のように噴き上げてみせるとき。荒ぶる自然の姿に恐れを感じるとともに、どこか浮き立つような気持ちで思い出される光景がないでしょうか。そう、闇夜を照らす、夏の火祭りの眺めです。
山の斜面に組んだ松の割木に点火して文字を浮き出させる京都の五山送り火は、その名の通り祖霊を送る伝統行事として広く知られますが、このような送り火の風習は迎え火が発展したものともいわれています。あの世からは炎の光でしかこの世が見えないとされていましたから、時にあのくらい大がかりな演出が必要だったということでしょうか。
日本の夏祭りには、このように祖霊としての神を「火で迎え、火で送る」ものが多いのです。同じく京都で始まり、厄祓いを目的とする夏祭りの原型になった祇園祭も、その例に連なるでしょう。祭りの前後で神輿を洗ったり仕舞ったりするときにかざす大松明や、前夜祭の宵山で山鉾を照らす大量の提灯、家の軒下に吊るされかそけ幽き光を放つ神灯などが、夜の町を情熱的に盛り立てます。
夏祭りと火が分かちがたく結びついているのは、この季節の気候が病を呼び寄せやすいからでもあります。病の要因になる不浄と湿度を「湿邪」と呼んで忌み嫌い、これを遠ざけ祓うためには、火が必要不可欠だったのです。あらゆるものを清め、浄化し、乾燥を促してくれる火が。
祇園祭で配られる、茅でつくられた粽のかたちの三角形と護符の赤い色は、まさに火を象徴するものでしょう。そして、その護符に記される「蘇民将来」の名は、祭りの由来と深い関わりがあります。ご牛ず頭天王(スサノヲ)が、旅の途中、疫病神の姿で現れて宿 こいねがを希ったところ、蘇民将来が快く受け入れてくれたことに感謝し、都を襲う災厄を避けるには「蘇民将来之子孫也」と書いた茅の護符を門に貼ればよい、と告げたことがもとになっているといいます。以来、蘇民将来は厄病除けの守護神とされるようになりました。

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