加藤 直美
2014年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2014年11月01日 |
加藤 直美 |
住まい・生活 |
食生活 |
情報誌CEL (Vol.108) |
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一昔前まではどちらかといえば消極的なイメージで捉えられることが多かった、コンビニエンス・ストアの食品(コンビニ食)。しかし、黎明期から40年、コンビニが日本人の暮らしに深く浸透した結果、いつの間にか、食においても欠かせない存在となった。コンビニ食の進化の裏にある技術について、小売業の実態に詳しい加藤直美さんに話を聞いた。
コンビニエンス・ストアが提供する食、すなわち「コンビニ食」とは、ここでは主に、すぐ食べられる弁当、おにぎり、パンなどを指します。ふだん私たちが何気なく食べているこれらコンビニ食のひとつひとつに、意外な技術の歴史が隠れています。
食の常識に挑む
コンビニ食を代表する商品であるおにぎりひとつとっても、技術革新の積み重ねが見られます。1970年代後半に登場し始めた頃、パリパリの海苔を自分で巻いて食べる「手巻き」にしたことが、まず画期的でした。海苔とご飯の間に入れたフィルムを引き抜き、手を汚さぬままおにぎりに海苔が巻けるという仕組みは今やすっかりおなじみになりましたが、その後も、いかにおにぎりの形を崩さず、海苔を破損させず、海苔とおにぎりをうまく合体させられるかを追求し、パッケージの改良が進められてきました。
そしてもうひとつおにぎりで重要視されてきたのは、その「握り方」です。お母さんが握ってくれるようなふっくらしたおにぎりを、同品質で膨大に大量生産するべく、改良が続けられました。その結果、手づくりのおにぎりと同程度の柔らかさで握る力を計測して再現する調理機器が開発され、手づくりに匹敵する、ほどよい柔らかさのおにぎりが実現したのです。最近ではおにぎりを締めつけず柔らかさを保つための四角いパッケージも登場しています。このように、おにぎりだけでも常に新しい技術が試され、その努力は今もなお続けられています。
温度が命
もうひとつのおいしさを保つ重要な要素、それは温度管理です。コンビニの棚に、温度計が設置されているのを見たことがないでしょうか。サラダや乳製品などが置かれる一般的な冷蔵ケースは4〜5℃、その横に並ぶおにぎりのケースは約18℃に保たれています。実は、この温度こそがおにぎりの味と鮮度を保つために欠かせない要素なのです。風味を損なわないよう赤ワインをセラーで大切に保管するように、おにぎりにも適温があり、約18℃に設定したケースで味を保つ努力がなされているのです。