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情報誌CEL

井戸 理恵子

2014年11月01日

コラム 「日の国ニッポンの理」 太陽が蘇る日 冬至

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2014年11月01日

井戸 理恵子

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情報誌CEL (Vol.108)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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現代ではさほど重要視されていませんが、古代人にとって冬至は正月と同じ意味を持っていました。太陽が軌道上いちばん南側に来るため1年で昼が最も短くなるこの日、太陽は一度“死に”、新たに“復活”すると考えられたのです。
閏月で調節する旧暦の太陰太陽暦では、冬至が11月の朔日(月の1日め、新月の日)とぴったり重なる「朔旦冬至」が、19年周期で巡ってくるよう運用されていました。2014年の11月1日 ― 新暦の12月22日はまさにその日で、今年は19年に一度の、特別な冬至を迎えることとなります。
新暦で暮らす現代人の間で、朔旦冬至が話題にのぼる機会はほとんどありませんが、20年ごとに社殿を新しくすることで知られる伊勢神宮の式年遷宮は、朔旦冬至の周期に合わせて始められたという説があります。
この年の前後には天変地異が多く、太陽や月の蘇り=再生を形にした遷宮を行い災いを鎮めようとしたのです。また19年に一度大がかりな「再生への指針」を掲げることで、やがて起こりうる災害に人びとの注意を向けようとする狙いもあったでしょう。
古代の人はまた、19年に一度、太陽と月のリズムが重なるこの機をとらえ、再生の力を体に取り込もうとしました。朔旦冬至に日付が変わる前日の24時前後、変若 水という「若さを甦らせる水」を汲んで飲み、その水で食事を作ったのです。水から「若々しい生命力」を得る「常若」思想はさまざまな儀式に組み込まれ、現代の日本文化に受け継がれています。
興味深いことに、冬至の文化は、同じ太陽のめぐりに遭遇する北半球諸国の間で同時発生的にみられます。たとえば、古代ヨーロッパのアニミズムや神話では、10月末日に太陽が別世界に消え、代わりにお化けや精霊がやって来て跋扈するエピソードが、各地でいろいろに形を変えて伝えられていますが、そのなごりを今にとどめるのが、ハロウィンです。時代を経る途中でカソリックの万聖節と結びつき10月末日に定着しましたが、祭りの由来は、太陽の復活を祝う冬至にあったともいわれています。
ハロウィンのシンボル・南瓜は、日本の冬至にも欠かせない食材で、「冬至南瓜」として南瓜と小豆をいっしょに煮たものを食べますが、これは黄色(南瓜)と赤色(小豆)を、復活した太陽に重ねた縁起担ぎだと思われます。
むろん同時に、寒い時期に凍えた血の道を整え、あたたかさを体に取り入れるためでもあったでしょう。現在は、南瓜のカロテンが皮膚に潤いを与え、小豆のポリフェノールが血流をよくすることが科学的に解明されていますし、また冬至に入る柚子湯も体を温める効果が高く、理にかなっています。

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