弘本 由香里
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2015年03月02日 |
弘本 由香里
|
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.109) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
少子高齢化が進み、今後、マジョリティとなる単独世帯のウェル・ビーイングを支えることが、自治体が抱える問題を解く鍵となるのではないか――。
地域での人の交わりが日常的に活性化するコミュニティワークに着目し、福祉、教育、雇用、コミュニティの問題を解決するための糸口を探る。
高齢者単独世帯のウェル・ビーイングと地域の連関性について
単独世帯が多数を占める社会と制度の軋み
年金、医療・介護、住まいなど、生活者の暮らしを支える基盤となる制度の骨組みが、超高齢化とともに立て直しを迫られている。高齢者人口、とりわけ75歳以上の人口の増加とともに社会保障給付費がうなぎ上りに上昇していくことは誰もが知るところで、これを抑制することが行財政の大きな課題になっている。
しかし、問題は高齢者の数や社会保障の額の大きさだけにあるというわけではない。戦後の高度経済成長を、大都市圏への労働力の集中という形で支えてきた、社会の仕組みや家族のあり方そのものが軋んでいると考えるのが妥当だろう。いわゆるサラリーマンの核家族は、世代間で生業を継承する必然性がなく、勤務地の流動性も高い。結果として、家族が同居を要する時期は限られ、世帯分離や離別・死別を経て、いずれは単独世帯(一人暮らし世帯)化していく運命を潜在的に抱えている。片や農林漁業や自営業でも、生業が継承されなければ、単独世帯化が進んでいく。
2010年の国勢調査では、一般世帯数を家族類型別に見ると、「単独世帯」は1678万5000世帯(一般世帯の32.4%)、「夫婦と子供」は1444万世帯(同27.9%)、「夫婦のみ」は1024万4000世帯(同19.8%)、「ひとり親と子供」は452万3000世帯(同8.7%)などとなっている。2005年と比べると、「単独世帯」の実数は16.1%増となっており、一般世帯に占める割合は29.5% から32.4 % に上昇している。
晩婚化や未婚率・離婚率等の上昇もさることながら、高齢化とともに核家族世帯の単独世帯化が進んでいる。顕著となってきた単独世帯のマジョリティ化が、今、年金、医療・介護、住まいはもちろんのこと、コミュニティや教育に至るまで、さまざまな政策分野で議論の的となっている。