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情報誌CEL

井上 雅人

2015年03月02日

コラム「衣食住遊」あした着る機能

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2015年03月02日

井上 雅人

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情報誌CEL (Vol.109)

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衣服の起原は1本の紐である、という説がある。手に持った石や棒などの道具を紐に引っ掛けることで、両手を解放したというのだ。片手が塞がっているのと両手が自由なのとでは、活動の広がりが随分と違う。疑わしい説ではあるが、説得力のある話でもある。近年、速乾性や保温性を売りにした機能性衣料というのが話題になっているが、それどころか人類は最初の最初から、かなり高度な機能性衣料を身に着けていたのだ、というのは面白い考えだ。
「着る」とは元来、機能を纏うことだという考えは、マーシャル・マクルーハンの考えに近い。マクルーハンは、およそ全ての道具を、身体機能の拡張として理解した。例えばカナヅチは物を叩くという拳の機能の拡張であり、自動車は速く走るという足の機能の拡張である。マクルーハンの世界観によれば、およそ全ての道具は、機能拡張として身体に接続することができる。つまり、およそ全ての道具は「着る」ことができるのだ。人類は、より機能を拡張してくれる様々なかたちの「服」を発明してきたし、これからもおそらく発明して、着込んでいくことになるだろう。
道具を「服」と捉えたり、使うことを「着る」と表現したりするのは言い過ぎな感じもするが、現在、究極の道具のひとつとして掲げられているのが「パワードスーツ」であることを考えると、あながち大げさともいえない。日本のいわゆる「ロボットアニメ」に出てくる主人公が乗り込む人型の機械、あれが「パワードスーツ」だ。「ロボットアニメ」に出てくるメカが、実はほとんど「ロボット」ではないというのも面白い。
パワードスーツは機能拡張の道具であり、自律した制御システムであるロボットとは違うものである。その名の通り「スーツ」なのだ。乗るものではあるが、着るものでもある。これらは着ることによって身体機能を著しく拡張する道具である。こういった機械は、いうならばショベルカーと同じである。しかし現在注目されているのは、ショベルカーというよりは、電動アシスト自転車程度の軽便なものだろう。実際に、昨今開発されつつある介護用や肉体労働用のパワードスーツには、人間が加えた微弱な力を感知しモーターによって増幅する、電動アシスト自転車のコンピュータ制御システムが応用されている。

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