檀上 和寿
2015年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2015年07月01日 |
檀上 和寿 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.110) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
住民の幸福実感を礎とした地域づくり
いま、人と人との結びつきなど、経済的な豊かさ以外の視点も含めて、住民が「真の豊かさ」を実感できる地域づくりが必要とされている。こうした背景を踏まえ、住民の幸福実感向上を目指す自治体同士が手を組んで生まれたのが「幸せリーグ」だ。リーグはどのような経緯で生まれ、どんな活動をし、何を目指しているのか。
幸せリーグ結成の背景
地方自治法には、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本」とする、と明記されている。この住民の福祉の増進、すなわち幸福の増進に真正面から挑戦した取り組みが「幸せリーグ」である。
幸せリーグは、正式名称を「住民の幸福実感向上を目指す基礎自治体連合」という。住民の幸福実感の向上という同じ問題意識を持つ基礎自治体同士が交流し、互いに政策について学び合いながら、活動の成果をそれぞれの行政運営に活かし、誰もが幸福を実感できる地域社会を築いていくための連合体である。2013年6月、荒川区が発起人代表となり、北海道から九州まで全国52の基礎自治体の賛同を得て発足した。2015年4月現在、59の自治体に拡大し、カバーする人口も500万人近くにのぼっている。
幸せリーグの発足を呼び掛けた荒川区では、2004年11月、西川太一郎区長の就任時から、積極的に「住民の幸福実感向上」に取り組んでいる。住民に最も近い行政として住民の悩みや願いを把握し、それを受け止め政策に反映させていくことができるのは基礎自治体である―そうした信念から、西川区長は就任直後に「区政は区民を幸せにするシステムである」をドメイン(=事業の領域)として掲げ、住民の幸福に寄与するため「役所だからこそできる」という発想を全職員が持てるよう、職員の意識改革に強いリーダーシップを発揮してきた。
そして、主観的な幸福を増進するためには定量化が必要になると考え、 「荒川区民総幸福度(Gross Arakawa Happiness:通称GAH)」の研究を始めた。GAH導入の目的は、区民の幸福度を指標として表し、その動向を分析して政策・施策に反映させることにある。そのため、2009年に区のシンクタンクとして荒川区自治総合研究所を設置し、様々な立場の専門家や学識経験者を客員研究員として招き、職員とともに海外の先進事例や指標の作成等、GAHの本格的な研究に取り組んできた。