白石 小百合
2015年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2015年07月01日 |
白石 小百合 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.110) |
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幸福度研究からみえてくるもの
地方創生でも注目されている女性が、何に幸福を感じているのかを知り、対策をとることは、地域の持続的な発展にもつながるのではないだろうか。就業、結婚、出産、育児というライフイベントと女性の幸福感との関わりを、アンケート調査と計量経済学による分析から考察する。
「幸福度」というデータ
女性の幸福感を考える上で、まず、「幸福度」というデータをご紹介したい。幸福度とは、個人にアンケート調査を行い、「全体としてみて、あなた
は現在、幸せですか、あるいは不幸ですか」というような質問に対して、自分が感じている幸福の程度を、選択肢の中から答えてもらうというものである。選択肢が「とても不幸」から「とても幸福」の5段階であれば、「とても不幸=0点」「とても幸福=5点」のように数字を当てはめると、その人が感じている幸福の程度を数値化することができる。
もちろん、幸福感は個々の人の感じる主観的な感情であり、性格やその日の気分など様々な要素に影響を受けるものの、データとして収集することで、人々の幸福感を客観的な数値情報としてとらえることが可能となる。個人の幸福感をデータ化することができれば、例えば現在の日本全体の幸福感の水準が過去と比べて低下していないかを確認したり、他の国や地域との比較が可能だ。そこで、90年代以降、幸福度データを使って、なぜある人が幸福・不幸なのかを探ろうとする「幸福度研究」が各国で進められている。特に「とても不幸だ」と回答した人が、社会的なケアを必要としているのではないかを調査し、その対応を考えることは、社会全体にとっても有益なことであろう。そして、社会全体の幸福感の程度をみることは、自分たちの住む地域・国は果たしてどの程度豊かであるのか、といった富の程度を測ることにつながる。幸福だと感じている人が多い社会は豊かであると考えることができるからだ。「豊かさ」を測る代表的な指標にGDP(国内総生産)があるが、これはあくまでも金銭的価値のみを測るデータである。幸福感は後に述べるように、金銭面とは直結しない要因の影響を受けているので、幸福度データをみつめることは、金銭ではカウントされない活動に光を当て、その価値を再認識することになる。