CEL編集室
2015年11月02日作成年月日 |
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2015年11月02日 |
CEL編集室 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.111) |
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働き手が減り、過疎にあえぐ市町村は増加の一途をたどっている。しかし、一方で、多大な投資はせずとも、高速のインターネット回線等のICT(情報通信技術)インフラと独自の創造力を活かすことで、変貌を遂げつつある地域もある。都市圏に拠点をおく企業がサテライトオフィスを次々に開設し、多彩な職能を持つ人々が移住してきているという徳島県神山町を訪ね、地方での新しい働き方を探った。
ICTが町に「異変」を起こした
徳島市内から車で約50分、急峻な山々の間を流れる鮎喰川上中流域に沿って広がる神山町。町が誕生した1955年の2万1000人をピークに人口は減少し、現在の人口は約5900人弱、高齢化率は46%に達し、典型的な少子高齢化が進む町だ。
その神山町が脚光を浴びるようになったのは、2つの「異変」に端を発する。2010年以降、都市圏に本社があるICTベンチャー企業がサテライトオフィスを続々開設したこと、11年に町史上初めて転入者数が転出者数を上回ったことだ。この異変は、過疎にあえぐ他の市町村を瞠目させた。以来、自治体からの視察等が引きもきらない状態が続いている。
この立役者となったのは、2004年に設立されたNPO法人グリーンバレーだ。理事長の大南信也さんは、神山町出身。「『できない』ではなく、『どうすればできるか』を考える。そして『とにかく始める』、Just Do It!」をモットーに、生まれ育った町を、多様な人材が集まるコミュニティにする取り組みに携わってきた。
都市部に本社がある企業に働きかけ事業所を誘致する「サテライトオフィス」、カフェやウェブ制作会社など、将来町が必要とする技術を持った働き手や企業を逆指名して移住を受け入れる「ワーク・イン・レジデンス」、厚生労働省の認定を受けた職業訓練や、起業支援など町の後継人材を育成する「神山塾」などは、その主な例だ。
これらの背景には、「創造的過疎による持続可能な地域づくり」という考えがある。人口減少は受け入れながらも、外部から若者やクリエイティブな人材を誘致することでコミュニティの健全化を図っていく、というのだ。
そのためには、移住者の多様な働き方を可能にするための場としての価値を高めなければならない。これを実現可能にしたのは、神山町全域に整備された超高速ブロードバンド網など、ICTインフラの充実だ。