奥田 浩二
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2015年11月02日 |
奥田 浩二
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
情報誌CEL (Vol.111) |
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シリコンバレーにおける起業支援の基本モデル
世界的に景気の不透明感が続くなか、新規事業の創出や拡大を柱とした成長戦略のもとで、今後の日本における起業・創業支援はいかに可能か。大学や企業、金融機関、地域等が連携した米国の支援モデル――イノベーション・サポート・システム――を紹介し、地域活力の強化へ向けた仕組みづくりにおけるヒントを探る。
はじめに
政府が2013年6月14日に閣議決定した日本再興戦略(*1)では、中小企業・小規模事業者の革新に関係して開廃業率10%台(*2)を目指すことを目標に掲げるなど、新たな事業の創出や成長を重要な柱のひとつにしている。
その実現のためには、大学からの起業や企業からの事業創出などが重要となる。これらの活動を行うにあたって目標にされるのが、米国西海岸のシリコンバレーや東海岸のボストン近郊を中心としたイノベーション地域である。
本稿では、ベンチャー企業の誕生と成長をサポートする仕組みを「イノベーション・サポート・システム」と呼び、地域との関係を加味しつつその内容を分析する。分析を通じて、今後の日本における起業・創業支援への示唆を考察することが目的である。
今回は、前編としてシリコンバレーにおける起業支援の基本モデルを紹介する(*3)。
イノベーション・サポート・システムの構成要素
イノベーション・サポート・システムとは、起業や事業創出、企業成長を支援するための連携の仕組みである。起業者を中心に考えた場合の構成要素をChart 1に示す。
Chart 1の各項目の概要は次の通りである。
〈大学〉起業に関する知識や知恵の源泉である。起業教育の場でもある。
〈地元行政〉補助金や助成金、相談業務など多様な施策を通じて起業者を支援する。
〈専門家ネットワーク〉税理士などの士業やコンサルタントなどが専門的アドバイスを行う。
〈企業〉大学と並ぶ起業や新事業の源泉。また、商品やサービスの買い手でもある。
(*1)「首相官邸」ホームページにおける「日本経済再生本部」ページに掲載されている「日本再興戦略」資料参照。
(*2)2015年版「中小企業白書」によれば、2013年の日本の開業率(有雇用事業所数による開業率)は4.8%、廃業率は4.0%である。
(*3)本稿では、2007年時点の状況を基本モデルとして記述する。次稿では、2007年以降の変化を分析する。