鈴木 隆
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2015年11月02日 |
鈴木 隆
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都市・コミュニティ |
都市システム・構造 |
情報誌CEL (Vol.111) |
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今日の複雑化する社会では、あらゆる分野で専門の細分化が進んでいる。細部の分析が高度化する一方で、全体を掌握できなくなっていることが、さまざまな分野で生じている混迷の要因ではないか。全体を捉えるためのシステムについて考察する。
はじめに
システムは役に立つものの見方である。要素に細分化する還元主義と部分最適化がもたらす今日の混迷を解くカギとなる(*1)。本誌106、107号掲載の拙稿「機械と生命のパラダイム――混迷を解くカギ」で述べた生命論パラダイムの方法論のひとつでもある。しかし、システムについてよく理解せず、適当に使われていることが少なくない。例えば、情報システムは回線でつながったコンピュータのことだ、などとよく勘違いされている。そこで、今回は、システムの基本から最先端の理論まで勘所についてみていくことにする。
構造としてのシステム―― 一般システム理論
「一般システム理論」の最初の提唱者である生物学者のルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィは、システムを「相互に作用しあう諸要素の複合体」と定義する(*2)。複合体といっても、実体ではない。概念構成物(モデル)である。各人の問題意識によって、ある範囲で重要だと思う要素を選ぶことになる。重要なのは各要素の実体・中身ではなく、要素間の関係・相互作用である。「何が集まっているか」ではなく、「いかに集まっているか」に着目するのである。システムは諸要素の関係によって全体を認識する、ものの見方なのである。
例えば、家族は、夫婦、親子、兄弟といった関係からなるシステムである。単なる要素の寄せ集めではなく、関係・相互作用によって統合されていなくてはならない。孤立した個人が集まっただけでは烏合の衆であって、家族というシステムにはならない。要素の実体が同じでも関係が違うと、異なるシステムになる。
(*1)『還元主義を超えて』(アーサー・ケストラー編著、池田善昭監訳、1984年[原著1969年]、工作舎)、『ターニング・ポイント』(フリッチョフ・カプラ著、吉福伸逸他訳、1984年[原著1982年]、工作舎)
(*2)『一般システム理論』(ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ著、長野敬、太田邦昌訳、1973年[原著1968年]、みすず書房)、『システム理論序説』(松田正一著、1971年、オーム社)、『システムへの誘い』(松田正一著、1985年、泉文堂)