弘本 由香里
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2016年03月01日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
都市システム・構造 |
情報誌CEL (Vol.112) |
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『上町台地 今昔タイムズ』と「大大阪」のフロンティアへのまなざし
人口減少にともない社会の変革が求められる今日、都市の在り方もまた再考を迫られている。近世から近代へ、急激な市域拡張が田園を飲み込んで、当時日本最大の都市「大大阪」を生んだ。その変遷に着目する地域の壁新聞『上町台地 今昔タイムズ』の取り組みを例に、これからの都市再編のヒントを探る。
身近な暮らしのなかの歴史を将来につなぐ
大阪の歴史の原点ともいうべき、都心部を南北に貫く上町台地界隈に軸足を置く、筆者も研究活動の一環で発行に携わっている『上町台地 今昔タイムズ』(*1)という、小さな壁新聞がある。発行の趣旨は次のとおり。〈長い歴史のなかで、天災や政変や戦災、著しい都市化も経験してきた地。時をさかのぼってみると、まちと暮らしの骨格が浮かび上がってくる。自然の恵みとリスクのとらえ方、人とまちの交わり方、次世代への伝え方(中略)。過去と現在を行き来しながら、未来を考えるきっかけに。(後略)〉地域の方々に貴重な資料やコメントを提供していただき、身近な暮らしのなかにある歴史を共有し、将来につながる種としていく試みである。
2015年は、大阪にとって何重にもシンボリックな年となった。「戦後70年」は言うまでもないが、奇しくも「大坂城落城400年」に「道頓堀開削400年」。さらに大阪市が面積・人口ともに全国最大となった大正末期の「大大阪誕生90年」にも当たった。特定の周年のみに価値があるわけではないが、それを機に日常的に歴史を振り返って考える視点を得ることができるならば、シンボルイヤーも無駄にはならないだろう。
近世大坂と近代大阪の境目「大大阪」へのまなざし
『上町台地 今昔タイムズ』では、2013年から2015年にかけて近世大坂と近代大阪の境目ともなる「大大阪」に関連する題材を取り上げてきた。本稿では、都市の将来に向けて、それらの題材を通して得られた視点を紹介したい。
明治22(1889)年の大阪市制施行時、15.27km2だった市域は、大正14(1925)年の第二次市域拡張で181.68km2に一気に広がり、当初の約12倍近く、現市域の大半を編入した。
(*1)『上町台地 今昔タイムズ』(発行:大阪ガス?エネルギー・文化研究所、企画・編集:U-CoRoプロジェクト・ワーキング)。プロジェクトの経緯や、発行物のバックナンバー等は、ホームページで公開している。http://www.og-cel.jp/project/ucoro/event2_kon.html