情報誌CEL
【インタビュー】 「学びを学ぶ」にあたって大切なこと
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2016年07月01日
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佐伯 胖、鈴木 隆 |
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ライフスタイル
コミュニティ・デザイン
その他
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情報誌CEL
(Vol.113) |
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学びといえば、自らが学校教育で学んできた姿を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、認知科学をはじめとした最先端の研究では、そうした学びのあり方はもはや過去のものとなっている。革命的に変わった最新の学びの捉え方について、認知科学、学び研究の第一人者である佐伯氏にお話を伺った。
教育観を変える 「教える」から「学び」の 支援へ
―― 本号の特集のテーマは「学びを学ぶ」です。『CEL』では、これまでさまざまなコンテンツを提示してきました。ところが、学んだはずの知識をいざ実践しようとすると、どうもうまくいかないことが多い。コンテンツを学ぶ前に、学びのあり方について見直すことが必要ではないかと思ったわけです。佐伯先生は、工学からスタートされ、心理学、認知科学、教育学と幅広い分野にわたって学びについて研究してこられました。学びの捉え方はどのように変わってきたのでしょうか。
佐伯:まず、「学び観」が変わる前提として、「教育観」の転換があったのです。かつては行動主義(*1)をベースにした「教え主義」的な教育観が全盛でした。それが、1960年代以降、認知心理学の研究で得られた知見が取り入れられるようになり、教育観も「教え主義」から「わかる主義」へと変わり、理解することこそが大事だという話に変わってきたんです。これが一番大きな転換です。
「わかる主義」に変わってからは、行動主義でよく使われていた「学習」という言葉を避けて、「知識獲得」「知識理解」という言葉を使うようになった。ところが、「知識獲得」や「知識理解」は、個人の内部のメカニズムを重視し過ぎて、外的な「教育」からは完全に離れてしまいます。それはどうにかしなければいけないと、「インストラクショナル・サイコロジー」、つまり「教えることの心理学」というのが1980年代になって出てきたわけです。ここで言う「インストラクション」ですが、また「教え主義」に戻るということではなく、「知識理解」や「知識獲得」という認知心理学の研究で得られた知見を、算数や理科、あるいは文章理解(国語)などの「教科理解」に活かすということです。
(*1)1912年、アメリカの心理学者J・B・ワトソンの「行動主義宣言」により創始された心理学のアプローチ。内的・心的状態に依拠するのではなく、客観的な行動を研究すべきだと提唱した。