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情報誌CEL

福島 真人

2016年07月01日

学習概念を組み直す

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2016年07月01日

福島 真人

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情報誌CEL (Vol.113)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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学習概念を組み直す 実験的試行としての学び

日常生活では、リスクや失敗を排除し、目標に向けて直線的に進めていくことが良しとされる。ところが、科学研究の現場では、実験は、厳密な手続の下で仮説を確認するというよりは、試行錯誤から新たな学習機会を得ていく創造的なプロセスである。実験の概念をヒントに、学習を捉え直す。

学習のプロトタイプ

認知心理学者のロッシュは、我々が使う日常的な概念には、プロトタイプ効果と呼ばれる性質があることを明らかにした。たとえば「鳥」という言葉を我々が聞いてすぐさま思い浮かべるのは、いかにも鳥らしい鳥、つまり雲雀とか、鷹とか、雀とかであり、鳥と聞いて「だちょう」や「ペンギン」を想うのはかなり稀だというのである。ロッシュの主張は、全ての概念は、いかにもそれっぽい中心的な具体例があり、それが我々の対象理解を大きく左右するという点である(Rosch & Lloyd, 1978)。
「学習」という言葉にも、当然こうしたプロトタイプ、つまり典型的イメージのようなものがつきまとっている。それは多くの場合、学校の授業のように、カリキュラムをこなしていく過程という理解である。このイメージの特徴は、学習とはある種の目標達成を中心とした、やや直線的なプロセスだと仮定している点である。実際、学習という名前で言われる現象の多くは、そうした傾向を含んでいるのは事実である。算数を学べば、その問題が解けるようになり、水泳を学べば、泳げるようになるといった具合である。
一時期、学校教育批判の先鋒として巷間に膾炙した、いわゆる「徒弟制モデル」についても、そうした目標指向性というイメージは実はあまり変わらない。学校での学習の内容が何のためかよく分らないというのは、よく聞かれる批判だが、これに対して、徒弟的な学習では労働と学習は一体化している。親方の具体的な「わざ」を目標として徒弟は頑張るから、学習にも身がはいるというわけである(福島編、1995)。ここにもやはり、目標に向かって一直線という雰囲気がある。この学習という言葉を「学び」と置き換えても、同じようなニュアンスはついて回る。というのも、学びは「まねび」であり、目標となる先達をまねてこその学びであるというニュアンスがそこに残るからである。

プロトタイプを超えて

しかし実際の(特に現場での)学習プロセスというのは、こうした「プロトタイプ」には還元されない、複雑な様相を呈している。
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